「いつもと違う、気がする」
……鋭いなぁ。
確かに変えたものがある。
だけどそれは、おそらくどちらかと言えば消極的な変化で、僕自身ですらすでに意識の外だった。
だから、さすがだなぁ、と呆れつつも僕は多分、嬉しかったんだと思う。
「そうか、香りが少ないんだな」
勿体ぶるつもりはなかった、すぐに答えを教えるつもりだった。
なのにそれより早く、頷きながら当てられてしまったものだから、僕はこみ上げる笑いを堪えきれなかった。
それがくすぐったさから出た笑いだとでも思ったんだろう、離れようとした先輩を引き止めて、大丈夫、と示してから理由を話した。
香りは痕跡になり、足掛かりになる、よって潜む機会の多い自分には不向きで、これまでのものより少ないものを見つけたから変えたのだと。
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