あたたかい涙「俺、瑠璃のことが、好き。」
みるみる目の前の顔が赤くなっていく。
カチリと胸の中で音がした。それから、頭の中と胸の中がいっぱいになって、溢れて止まらなくなって。
ポロ、ポロ。
「瑠璃…」
名前を呼ばれるまで、自分が涙を流していることがわからなかった。
「ごめん、やっぱりびっくり、するよ、な。いや…」
違う。違う。これは、これは、拒絶じゃない。
「違う。いや、じゃない。あん、しんしたんだ。」
「おれも、あんたのこと、好きで、いいんだ、ってわかって」
「そうか。瑠璃も、」
「ずっと、思ってた。あんたをすきになっちゃいけないって思って、おしこめてた。でも、いいんだ。あんたのこと、好きでいていいんだ。」
ポロポロ涙を流し続ける瑠璃を優しく抱き締めて、頭をなでて、背中をさすってやる。
「瑠璃。涙は、嬉しくても流れるんだよ。」
「そう、なのか」
「心の中がいっぱいになった時に溢れてくるんだ。だから、瑠璃は、大丈夫。」
「よかった。 もう、このまま、泣きすぎて、死んでもいい。」
「だめだよ。俺も、真珠も、瑠璃がいなくなったら、泣くよ。」
「そう、だよな。」
「お兄様!雨、外!」
「ごめん。瑠璃に、好きだって伝えたら、涙石ポロポロ流しちゃって。泣き疲れて、寝ちゃった。」
「ううん。いいの。瑠璃くん、すごく、幸せそうに寝てるから。いいの。」
「頼める、かな。」
「大丈夫よ。」
祈るように手を合わせ、両目を閉じて、目の前の騎士を思う。
「よかったね。瑠璃くん。」
あたたかい涙が頬を流れ、彼の胸の核が輝きを取り戻す。目を開けると、シャルが瑠璃が流した涙石を差し出していた。
「多分、瑠璃ならこうするだろうから。」
こくり、と頷いて貰った涙石を胸元に持っていくと、ひとりでに、それは核に吸い込まれていった。
「私、瑠璃くんから、たくさんもらって、たくさん幸せになったよ。だからね。次は、瑠璃くんの番よ。」
「瑠璃、もう行ったよ。」
「情けないな。」
「次は、俺の番、か。」
「あんたの手、あったかくて、やさしい。あの時と、同じだ。」
「あの時?」
「俺の核が傷ついて、あんたの部屋に担ぎ込まれた時。こうやって、手を握ってくれてただろ。」
「ああ。思い出した。みんな、必死だったから。包帯だらけにしたり、手当てしたりしたよな。」
「すごく、嬉しかった。」
「え?」
「ああしてくれて、すごく嬉しかった。包帯も嬉しかった。たぶん、あの時からだ。あんたを見ると安心するようになったんだ。」
両手でそっとあたたかい手を握り返す。
「あんたは、あったかくて、やさしい。だから、好き。」
「瑠璃も、あたたかいよ。」