あまあまで、ふわふわの謎「アンタに頼みが、ある。」
ドミナの市場で久しぶりに出くわした彼は神妙な面もちをして、目の前の男の片腕を掴んでいた。
「料理を、教えてくれないか。」
「え?」
曰く。話は数日前の煌めきの都市にまでさかのぼる。
「真珠姫、ジオ行ったことあるんだ。あそこのフルーツパーラー、シフォンケーキ美味しかったなぁ。」
「フルーツパーラー?ケーキ??」
「甘くて、ふわふわのシフォンケーキに、サイコロイチゴや、バネバナナの切ったやつがクリームといっしょになっててね、もう何枚でも食べられるの!」
「エメロードさん、甘いもの、好きなんですか?」
「うん!」
「次、私もたべたいな。」
「行こう、行こう!」
会話をきいた瑠璃は何とかして言葉の断片から
必死に手がかりを掴もうとした。
「ケーキ?ってあの、粉、と水をまぜて焼くやつ、だよな。アレが?ふわふわ?あまあま?」
自分が旅の途中で焼いたものは、平べったく、飾り気のないものだった。
一体アレをどうすれば、「あまあまでふわふわ」になるのか。
こんなことなら、ジオに行った時に一度くらいフルーツパーラーに連れて行けばよかった。
料理が出来て、ある程度口が硬くて、そして自分に、教えてくれそうなやつは…
いた。
こうして、材料集めに行ったドミナのバザールで、瑠璃は意を決して、見慣れた赤い帽子のお人好しの腕を捕まえるに至った。