旅人さんは料理番 1 鶏肉を一口大に切って、塩、コショウ。
キノコは軸をとって、一緒に串に、さす。
そうしたらかまどを開けて、網の上にのせて、焼く。
自分で作ったほうが、なんか、よくわからないけどたくさん回復する気がする。それに気づいたから、こうしてレストランのキッチンを借りて料理をするようになった。最近なんか、いきなり料理対決の助手まで押し付けられた。
「んーんん~~おい、もうすこしだぞー~いいにおいだ~」
たぶん、横にいる食いしん坊な試食係のおかげだと思う。
自分が作ったものを、満面の笑顔で、「うまいな!これ!」と言って食べてくれる。(もちろんおいしくないときはおいしくない!というけど)
すごく、うれしいから何度でも作るようになった。
そして。これもまた最近なのだけれど。
俺が、レストランのキッチンで料理をしだすと。通りかかった人や近くの店の人が一斉にこちらを見てくるようになった。
「おいしそうだねぇ。」
「今日は串焼きかな。」
「一回食べてみたいよなぁ。騎士団の皆さんのお墨付きなんでしょ?」
その視線と料理をする俺を、彼は決して見逃さなかった。
もぐもぐ。もぐもぐ。
お楽しみの食事の時間。
今日はちょっと肉を切るのに手間取ったかも。でも、おいしい。
「うーまー~~。お前の串焼きはおいしいな~~」
いつも通りに串焼きをほおばるパイモン。でも、ちょっと、今日は違った。
「まったくだ。腕をあげたんじゃないか?お前も。」
片目を隠した、青い髪の「先輩」がひょっこりやってきて、焼き立ての串焼きを一本、また一本と口にしている。お酒好きだから、最近行ったほかの国のお酒を持って帰ってきた時にはものすごく喜んでいた。
「でも、なんか悩んでるんじゃないか?あんた。」
「うん。」
「なんでだ?こんなにおいしいやつつくれる、空ってすごいぞ。ほんと!」
「でもさ、もうすこし・・・こう。盛り付けきれいにできないかな、って。シャンリンの料理とか見てたらそう思うようになったんだ。」
「なるほどなぁ。料理修行、できるところをお探しってことか…。紹介してやるから、明日の夜、またここに来てくれないか。」
料理、修行…ドキドキしながら連れていかれた先は。
「おい!これいつもの酒場じゃないか!」
「あぁ。いつものエンジェルズシェアだ。ちょうど、料理人が足りなくなってな。さがすように・・・」
「おい、騒がしいぞ・・・。お前か。」
「旦那さま。料理人、連れてきたぜ。」