そろそろ衣替えしましょうと言って茨が厚手のジャケットを持ってきたので、もうそんな時期かと思ってカレンダーへ目を向ける。たしかにもうじきAdamの稼ぎどきだと言って茨が張り切り始める頃で、ついでに窓の外を見ればわずかに葉が紅葉し始めている。
茨と出会って四度目の秋だ。
「……体感温度から考えるともう少しこのままでもいいけど、やっぱり服を変えるのは季節の区切りとして大事だからね」
「そうです。それに、もう少しいいかなという油断が衣替えを遅々として終わらせられない原因なんですよ」
凪砂の了承が取れるや否やタンスの中身をひっくり返し始める茨の様子を見て、実感のこもった言葉だなと少しおかしくなった。彼は自分の予定を狂わされるのが心底から嫌いなので、そういった怠惰な行動も同様に好きではないのだろう。
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