Quality of Sleep 村雨は目の前の信じられない光景に、自分はまだ夢を見ているのだろうか、と訝しんだ。
眠りから目を覚まし部屋の明るさに目を細める。カーテンの隙間からしろく眩しい光が差し込んでいた。まぎれもない朝のひかり。
このようなことは村雨にとって経験の無いことだった。そもそも寝つきも悪く、布団の中で思索を巡らせ様々な記憶をひっくり返し、未来のシミュレーションを幾通りも走らせたのちにやっと浅い眠りに落ちる。そして目を覚ますと、まだ夜である。これを何度も繰り返してやっと空が明らんでくるのが幼い頃からの日常だった。
それが、いま、朝になっている。狐につままれたような心地だ。ただ幸いなことに、快眠の機序は掴めずとも原因は明白である。ここが獅子神の寝室であり、昨夜隣には彼がいたということだ。晴れて恋人同士となったあとの、共に過ごすはじめての夜だった。
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