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    博惊(ドクレイ) カイソーヒロクの内容バレがあります 付き合ってないし恋愛感情があるかも微妙

    「……ということがありました」
    レイズが話していたのは、レイズが大理寺少卿となったばかりの頃の出来事だ。
    他の人間に反対され、疑問を投げかけられながらも、レイズは炎国の法に―自らが信じ、その身を捧げているものに従い、偉大な先達を罰することを決めた。
    あるいはそれは、同じ法の道を歩む者への敬意だったのかもしれない。
    レイズの話が終わるなり、ドクターは
    「あっはっは!」
    大きな口を開けて笑い始めた。
    レイズは眉を寄せる。
    ドクターが突拍子もない言動をとるのはこれが初めてではないが、レイズは自分が過去に体験したことをただ淡々と話しただけであり、冗談のようなものは一切口にしておらず、何故このような反応をドクターがとるのか全く分からない。
    これでロドスでは、ドクターはもっぱら寡黙で謎めいた、近づきがたい人物と思われているというのだから、レイズには信じられない。
    「君、炎国の偉い人なんでしょ?私は炎国のことはそんなに詳しくないけど、よくこんなに真っ直ぐなまま、ここまでやってこれたよね」
    とドクターが言う。
    その唇はまだ大きく弧を描いたままだ。
    「どういう意味ですか、それは。それに偉い人という言い方はあまりに単純すぎます。私は……いえ、ロドスにいる時の私は単なるオペレーターのレイズなのですが……」
    そこで、レイズは視線を落とし、黙る。
    「……レイズ?」
    ドクターもそれを不思議に思ったのか、声をかけてくる。
    しばらくして、レイズはドクターの方へと視線を戻し、
    「貴方も私はあまりに頑なすぎると……他の人間に対して冷たすぎると思いますか?私にもっと柔軟にするべきだと」
    と一層眉間の溝を深くして言った。
    自分がさきほど話した出来事を―それだけでなく、今までに起きた、それとよく似た出来事の数々を思い出しながら。
    レイズは自分の今までの行動に後悔など一つもない。
    しかし、ふと、この人物に自分はどう映っているのだろうと気になった。
    炎国の人間でない、いや、おそらくはどの国にも属していない、この大地から一歩引いたところに立っているような―仕事をサボったり、他人をからかったり、ふざけたり、子供っぽいようでいて、周囲を冷静に眺め、何もかもを見透かしているような、不可思議なこの人物に。
    また、ドクターは、ロドスの指揮官かつ、レイズの素性を知る限られた人間として、ロドスではレイズと特に交流する機会の多い人物であり、レイズとドクターは親しいと言えなくもない関係となっている。
    「え?いや、全く」
    ドクターは何故そんな質問をするのかとでもいうような、きょとんとした顔をしながらも、きっぱりと言った。
    「私は君にはぜひそのままでいてもらいたいよ」
    「……私は礼を述べるべきなのでしょうか」
    自分のことを肯定して欲しくてさきほどの質問をしたわけでないものの、ドクターの言葉自体は嬉しいといえるものであったが、あまりにあっさりと言われたことと、ドクターがさきほどまで自分のことを面白がるような態度をとっていたことから、どう反応するべきか判断しかね、レイズは微妙な表情になる。
    「はははっ。……私は君も知ってると思うけど、性格が良くもなければ純粋とも言いづらいからね。だから、君もそうだし、アーミヤもそうだけど……何か信じるものがあって、そのために、転んでも、何があっても、けして自分の気持ちを曲げずに前へ前へ進み続ける人のことは尊敬してるんだよ。信じてもらえないかもしれないけどね」
    「それは……分かっています」
    思いがけないストレートな言葉に、思わず視線をそらしながら、レイズは答える。
    ドクターは
    「へえ、そうなんだ」
    と驚いたような反応をしつつ、次の瞬間には
    「まあ、そうじゃなかったらさっき笑った時に君の雷で撃たれてるだろうしね」
    とレイズをからかうような声と表情になった。
    「私が気に入らないことがあればすぐに雷を落とす人間かのような言い方はやめてください!いいですか、雷とは人々を律し、罰する法であり、義そのものなのです。ですから、けして個人的な感情によって落とすものではなく……そもそもそのようなことをする人間は雷を司る者として相応しくないのです。よって……」
    レイズはしばらく雷を用いようとする者の心構えについてドクターに説明していたが、いつの間にか黙り込んでいたドクターが、急に
    「ふふふ」
    と笑ったので―さきほどのように激しいものではなく、むしろ静かに―レイズは訝しげな表情になる。
    「……何故また笑うのですか?というか、私の話を聞いていますか?」
    「もちろん。だから、もっと聞かせて欲しいな」
    強すぎる肯定は、聞いていないと言っているようなものだ。
    「……やはり私をからかっているのですね」
    「違うよ。私、そうやって法の話とか雷の話をしてる時のレイズが好きなんだよね」
    「なっ……!?突然何を言っているのですか!」
    顔を真っ赤にして怒り始めたレイズに、ドクターはまた大きな笑い声を上げる。
    「あはははは!」
    「まったく貴方は……!そうやってふざけたことや適当なことばかり言って!そういう態度は感心しませんよ!貴方は人の上に立つ立場なのですからね!貴方の言葉1つ、行動1つがロドスの者たちやロドス全体に大きな影響を与えることもあるのですよ!たとえば、この部屋の前を通りがかったオペレーターがさきほどの貴方の言葉を聞いてご……誤解したらどうするのです!」
    「大丈夫だよ。私の部屋って他の部屋よりもさらに防音に気を遣ってるらしいし」
    「そういうことではありません!」
    「それに、私はレイズの真面目すぎるところとか、頑固なところとか、そういうところが好きなんだよ、本当に」
    「また貴方はそういうことを…!というかそれは褒めているのですか!?」
    「ははは。もちろん」


    「実際、レイズにはレイズのままでいてもらわないと困るんだよね。ある人に言われたんだけど、もし私が悪い人になったらとことん悪くなるらしいから。その時に君が雷を落としてくれるならロドスも私も安心だろう?君なら、 容赦なく雷を落としてくれるだろうからね」
    「……当然です。ですがまずは、貴方に雷を落とされることのないよう努力していただきたいですが」
    「ああ、もちろん」
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