想い出の味昨夜しんしんと音を立てて降り続けた雪も止み、ほの白く夜空を覆っていた雪雲はどこかへ流れ行き、まさに晴雪。
柔らかく暖かな陽光が溶かした雪が、時折屋根や枝葉から落ちる音を立てていた。
雪の照り返した光が室内へと差し込み、華やかな切り絵や福画を照らし、飾られた水仙と共に春節の晴れやかさを浮かび上がらせているそんな日。
復興した四季山荘の一部屋では、白絹もかくやという美しい髪をふわりふわりと揺らしながら、忙しなく動く姿があった。
朝早くからずっとトトトトトと包丁がたてる子気味いい音と、ふんわりと食欲をそそる匂いが漂っている。
既に様々な料理が別室の卓の上に並び、調理の終わりが見えてきた温客行はふう、と満足気に息を吐いた。
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