約束の海 週に一度の通話と月に二回の逢瀬が、二人の五年間を繋いでいた。
「旅行、ですか?」
『うん、そう。夏の間に二泊三日くらいでどうかなと思っておりまして……ほら、この前五店舗目も軌道に乗ってきたって言ってたし、今ならちょっと時間取れないかなって』
週の半ばの十一時過ぎ、いつもの時間。電話口から届く低い声に耳を傾けながら、アズールは柔らかなシーツの上へ身体を横たえた。
寝室の明かりを落として、先週末から枕元に置きっぱなしになっているスウェットの上着を指先で手繰り寄せつつ脳内に思い出せる限りのスケジュールを羅列する。
商談、店舗の視察、今も続けている個人的なお悩み相談。日程の動かせない予定とジェイドに調整を頼めそうな仕事をざっと計算して、アズールは小さく頷いた。
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