晩秋これで何回目だろう。これを見るのは。
ぼんやりと浮かぶ愛しい人の穏やかな表情に、いまも俺は心を奪われたままだ。
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「……ナナミンち、泊めてくれない?」
電話で静かにそう告げた。
スマホの向こうからは相手の反応が無い代わりに近くを走る車の走行音が聞こえてきて、今外に居るんだ…と、21時を回った壁掛け時計に目をやりながら思った。
すると少し遅れて「…は?」という声が聞こえてきて俺は思わず小さく笑った。良かった、ダメですと開口一番に言われなくて。少なくとも今はまだ拒絶されていない。そう思って安心したが、拒絶されないようにこれから仕向けようとしているのだからどの道一緒なのかもしれない。子供という立場と、傷付いた心を理由に、今から自分はズルをしようとしている。優しいこの人が自分の願いを拒絶出来ないと分かっていながら。
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