手を伸ばした先「副所長!お久しぶりです!」
「あぁ、お久しぶりです。育児休暇中でしたよね。どうされたんですか?」
「保育園の審査に必要な書類を作成していただいたので散歩ついでに取りにきたんです」
変わらない笑顔の彼女の腕には、まだふにゃとした柔らかそうな子供が抱かれている。
「副所長、今日は?」
「事務作業のみの予定ですので事務所にいますよ」
そう答えた俺に彼女は目をキラキラさせて1歩近付くなり『抱っこしてください!』と、すやすや寝ている子供を不慣れな俺の胸へと差し出してきた。
「あ、あの…」
「お願いします!」
断るにも押しの強さに負けおずおずと見様見真似で抱いてみる。
初めて触れた小さな命。
小さいのに重くて温かい。
緊張のあまり腕に力が入る。
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