情動 あらすじ物語は冷静なシャムが柄にもなくカーツにキスしてくるところから始まる。
ビジネス的な関係だったカーツはシャムのキスに戸惑い、突き放そうとして気がつく。シャムが泣いていることに。
カーツに問いただされて、シャムは話しだす。自分たちは首領の駒にすぎない。彼の作戦の中で、自分たちはいろんなことを命令された。そうして徐々に命をすり減らしていった。
そして、明日の重大な指令をこなせば、命は尽きるはずだと。
カーツはパニックになり取り乱しながら聞く。「お前はこのことをわかっていたのか?ずっと……一人で抱えていたのか?」
シャムは黙って頷いた。
カーツはずっとペアを組んできたのにそんなこと一つ見抜けなかった自分を責める。悔しさとシャムとの別離する悲しみに声を殺して泣く。
そんなカーツにシャムは提案した。
私たちが出会ってからのことを思い返してみないかと。
そして二人は自分の思い出話をする。思い出話から彼らは自分の自己開示を始めた。どうして首領の元へ来たか、出会う前はどうしていたか、道具だと教えられて入るけど、実は手持ちポケモンがかわいいこと。そうしているうちに二人は心ごと打ち解けあっていた。そうなった先にカーツが自覚したのは、これまで無意識に抑えていたシャムへという女性への好意だった。
初めてシャムへの好意を伝えるカーツ。しかしシャムはカーツを拒否する。わたしたちは首領様のための命だから。しかし、シャムは取り乱しているが、彼女もまた彼に好意があるのは明らかだった。初めてキスしてきたのはシャムだったのだから。彼らは晴れてお互いの気持ちを確認し合う。しかし、共に生きるという未来はない。
ただ……本当に彼の手足として終わる以外の選択肢がないのかほんの少しだけ、彼の手足でない時間があったとして、また手足に戻ればいいのではないか。二人は夜明けまで限定で、ひっそりと首領の手足という肩書きを捨てる。ありのままの男女として、愛を確かめ合う。
そして、朝日が登った。二人は何事もなかったようにまた駒に戻り、最後の任務を遂行するのだった。