はなひらくひめごと よく晴れた午前の陽光が、寝不足の目に染みるようだ。大きな欠伸をひとつ、同じ姿勢を続けて固まった背中を伸ばして、ばきりと鳴る背骨に苦笑をひとつ。
新しい物が入ったと長次から知らされて、図書室から借り出した医学書を夢中になって読んでいたら、すっかり徹夜をしてしまった。
同室の留三郎は夜更けにやって来た小平太と長次に鍛練に誘われて出かけて行ったので、迷惑をかけることはせずに済んだ。
休日の前夜はつい夜更かしをしたくなる。忍務で何日もまともに眠れないような事も経験しているし、それで何か問題があるわけでもないけれど、休日前の夜更かしは気が緩むのか、反動で眠くなってしまう。
ひとまず顔を洗って目を覚まそうと考えて、伊作は部屋の戸を開く。爽やかな空気に微かな水の匂いが混ざっていて、誰かが洗い場で洗濯をしているらしいと気が付いた。
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