「ねー、ヒバにぃ」
「どうした」
集会所の納涼床に設置された椅子に座りながら、少女が行儀悪く机に突っ伏する。それを真正面にとらえながら、ヒバサは自身の得物の手入れと弾丸の調合を丁寧に行う。何分手先が器用故、こういった技巧については仕組みを理解すれば簡単に組み上げられるのだ。
さて、とある程度手入れが終わったところで、未だに机と仲良くしている少女の後頭部をつつく。そろそろ機嫌を見てやらねばモンジュが突っ込んできて、より一層面倒なことになるからだ。
「私って、女性としての魅力ないのかな」
「……は?」
てっきり狩猟についての悩みだと思っていたのだが、違うらしい。予想外の言葉に思わず声が漏れたが、一体どうしたのかと近くにたまたまいたアヤメに目くばせした……が、肩をすくめるだけ。
「いや、まぁ……そこらの女性よりも腕っぷしは強いと思うが充分魅力はあると思うぞ」
「えー……」
いかんせん身近にアオアシラを一ひねりする女性がいるのだ。英雄とはいえ、こういった悩みがあるだけ可愛いと思うのだ。だが、少女は何も言わずに近くに置かれた団子をもそもそ食べるだけ。
「というか、何でいきなりその話題なんだよ」
「えーっとね」
「……」
「教官にまた振られまして……」
「なるほど?」