ほんの出来心だったのだ。
少女は大社跡の大型モンスターが入ってこられない場所で、メラルーと二人震えている。手には目の前のいたずらっ子から取り替えした、ジンオウガの牙でできたお守り。それをぎゅうっと握って、モンスターが通り過ぎるのを祈る。
手にしているお守りは彼女のものではない。母が一等に大切にしているものだったのだ。それが欲しいと強請った事があるのだが、母は困ったような顔をして「これだけはだめなの」と謝罪をしてきた。その時はそんなに大切なのだから仕方ない。とあきらめたのだが、母が家事をしているときに外していたお守りを見つけ――つい、持ち出してしまったのである。
行商人に見せてもらった反物よりも、たたら場の炎や加工屋の鉱石よりも輝いているそれを首にかけ、友人たちに見せてから、こっそり大社跡へと遊びに行く。
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