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    ChukanabeMH

    @ChukanabeMH

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    ChukanabeMH

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     ほんの出来心だったのだ。

     少女は大社跡の大型モンスターが入ってこられない場所で、メラルーと二人震えている。手には目の前のいたずらっ子から取り替えした、ジンオウガの牙でできたお守り。それをぎゅうっと握って、モンスターが通り過ぎるのを祈る。

     手にしているお守りは彼女のものではない。母が一等に大切にしているものだったのだ。それが欲しいと強請った事があるのだが、母は困ったような顔をして「これだけはだめなの」と謝罪をしてきた。その時はそんなに大切なのだから仕方ない。とあきらめたのだが、母が家事をしているときに外していたお守りを見つけ――つい、持ち出してしまったのである。
     行商人に見せてもらった反物よりも、たたら場の炎や加工屋の鉱石よりも輝いているそれを首にかけ、友人たちに見せてから、こっそり大社跡へと遊びに行く。
     ハンターの修行をしているから慣れている、とその時の少女はただ慢心していたのだ。

     遊びに行った先で、メラルーにお守りを盗まれ、それを追いかけている間に行ったことがない場所に出てしまった。普段こそ小型モンスターしかいないはずなのに、そこには巨大な飛竜の姿が。こちらをじろりと捉えた途端に、少女は駆けだす。あんな爪でひっかかれたらこちらの命がないからだ。
     隣で怯えていたメラルーの手を引いて、どうにか逃げ込んだ先は林の中。
     きっとばちが当たったのだ、と一人と一匹で震えあがっていると――ずん、という足音が聞こえてきた。あの飛竜が近づいてきたのだ!

    「あ……」
     思わず小さな悲鳴が漏れると、それを聞きつけた飛竜がこちらを向く。もうだめだ! と思っているときらりと光る何かが飛竜に巻き付いた。

    「そっちはだめだ!」

     そんな言葉と共に飛竜は即座に拘束される。一体なんだろうと思っていれば、少女よりも年上の少年が飛竜に飛び乗っていた。そのまま彼は飛竜を動かして、少女がいる方向とは逆の場所に誘導していく。ぼうっとアイルーと共に見つめていれば、今度は誰かが少女の手を取った。

    「こっち」
     それは少女よりも少し年下であろう女の子。少女よりも力強い瞳を持っていて、彼女の手を引っ張った。怖い、と思うよりもこの子なら大丈夫だ、という安心が何故か少女の中によぎったのである。
     手を引かれるままたどり着いたのは、簡易的なベースキャンプ。女の子は後ろに小型モンスターがいない事を確認すると、テントの中に入っていった。どうするべきかとメラルーと目くばせしていると、彼女は何かを手にして戻ってくる。

    「はい」
     それは水筒だった。安心したのか、喉がからからに乾いているのを今さらに自覚して、メラルーと共に少女はそれを受け取って飲み干す。
     その様子を見ていた女の子は一つうなずくと、丸太のうえに座り込んだ。それに倣うように少女も座る。
     ……瞬間、何かが音もなく降って来た。

    「わっ!」
    「おかえりなさい」
    「ただいま」
     正体は先ほどの少年だった。にっこりと人好きのするような笑顔を浮かべる彼は、少女の顔を覗き込む。
    「それで、君はどうしてあんな場所に?」
     その言葉に思わず声が詰まる。何故って……
    「ニャ、僕がこの子の宝物をとちゃったんだニャ」
     どうしようか、と思っていると隣にいたメラルーが声をだす。人里にいないのに人語を介するのは珍しく、少年と女の子が目を見開いた。
    「なるほど、それで君は彼を追いかけてここに来ちゃったんだね」
    「うん……」
     少女はうなずくと今まで握っていたお守りを見る。

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