雪華の魔女 一人の子どもが泣いていた。
どこまでも広がる群青の空の下、草一つ生えない錆色の地面の真ん中で、一人の子どもが泣いていた。
ボロボロの外套を頭まですっぽりと被って声を押し殺すようにして泣く子どもを慰める人陰はない。
子どもの周りには人っ子一人どころか、見渡す限り障害物すら見当たらなかった。
何も無い大地の上には、どこからか牡丹のように白く大きな花弁が雪のように降り注いでいた。
その内の一枚が膝を抱えてうずくまる子どもの手の甲に落ちると、それに気づいた子どもはぴたりと泣き止んだ。
穢れのないその白い花弁に、子どもの喉がヒュッと音をたてる。その顔はみるみるうちに歪んでいった。
子どもは突然、大きな声で泣き出した。
ごめんなさい、ごめんなさいと謝りながら。聴く者も許す者もいない謝罪の言葉を青い空に向かって叫び続けた。
白い花弁が降り注ぐ幻想的な風景の中に埋もれる子どもの悲痛な声は、誰に届くことも無く青い空に吸い込まれて消えていった。