西の森の奥深く、もはや誰からも忘れられたであろう遺跡のさらに奥で、一人の魔導師が死んだ。
高く耳を通り抜ける鳥の声に顔を上げる。
擽るように髪を撫でていく風は冷たく、そろそろ備蓄品を見直さなければと胸中で独り言ちながら歩を進める。
遺跡に珍しい魔物が出るという噂を聞いたのは、年が明けた頃だった。
珍しいと人々の口にのぼるものの、いざ対峙してみれば虹色の鳥の正体は鉱石の泉の水を反射したものであったり、動き回る鎧を解体してみれば虫の巣であった等、拍子抜けで終わってしまうことは少なくない。
それでも頭の端に残っていたのは、生首が話しかけてくるという怪談めいたものだったからだろうか。
ゴーストや泣き女、果ては動く骸骨や植物から生まれる動物の蔓延るこの世界では生首一つでは別段思うところはない。生活圏は異なるものの存在しており、尚且つコミュニケーションがはかれるものも一定数いるのも当たり前ではある。
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