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    ヤギみち

    @xxxx_huyu
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    ヤギみち

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    マヨひいss/やさしいひと
    看病回。一彩くんがふわふわめ。

    毎度似た流れになりすぎて「いつものです」と開き直ったほうがいい気がしてきました。いつものです!

    ##マヨひい

    やさしいひと ――ああ優しいな、と思った。
     ぼんやりと朧げな視界で、慈愛の目がこちらを見つめていた。
     
     熱を出した一彩に気づいたのはマヨイだった。
     それからはベッドに寝かせて、柔らかく布団をかぶせ、ご飯もあーんし、汗をかけば身体を拭き寝巻きを替え、とさんざん世話を焼いた。
     パジャマまで着せるのは初めてだったが、マヨイは丁重な手つきで一彩を整えた。いつも通りに、やさしく。
    「流石だね」
     一彩がそう言うと、気まずそうに視線をうろうろさせていた。

     この人は、小さいものがすきだ。
     か弱い存在がすきだ。藍良などもよく邪な目で見ている。それでも誰にでも親切で、僕らALKALOIDも当たり前に大切にしてくれる、素敵な人だ。
     ――僕はこれだけでいい。
     これだけでいいんだ、マヨイ先輩。
     
     あれこれと世話を焼かれて、気が抜けたのだと思う。
    「先輩が、好きだよ……」
     荒い呼吸と入れ替わるように、その言葉が口から出た。瞬きしたマヨイが、ゆっくりとあとずさるのがわかった。
     まずいことをしたかもしれない。
     それはわかっているのに、熱に浮かされたままでは、その表情すら伺えない。
    「……ごめんねマヨイ先輩。気にしないでほしい」
     くちびるが戦慄いているのがやっと見えた。
    「つい、口から出てしまったよ。言わないでいようと思っていたのに、やっぱり僕はだめだね」
    「一彩さん」
    「……ごめんなさい」
     考えて、決めていたのに。
     こんな風にマヨイを困らせてしまって、自分が情けなかった。
     けれど言葉は一度漏らすと、壊れた蛇口のようになかなか止まらないものらしい。伝えなくてもいい事をまたひとつ、こぼす。
    「マヨイ先輩だと気づいていたんだ」
    「……?」
    「髪をかきわける感触が、素手ではなかったからね……」
     手袋を嵌めた両手を、マヨイはキュッと握りこんだ。いつか眠る頭を撫でたのを、気付いて黙っていたのだと知って、たまらなくなった。
     意を決してマヨイは尋ねた。
    「一彩さんは……わ、私のことが好きなんですか?」
    「……」
    「……一彩さん?」
    「…………」
    「……」
     すう、すう、と穏やかな呼吸音がする。
     問いかけは空振りしたが、正直マヨイはホッとしていた。それは同時に、答えを受け取る覚悟が決まっていなかったという証拠であり、自分の弱さに気落ちもする。
     ばら色の頬、穏やかな呼吸。上下する胸。あどけない寝顔をじっと見つめた。
    『先輩のことが、すきだよ』
    『気にしないでほしい』
     ――マヨイの前に踏み出そうとして、一歩引いた。
    「そこで貴方に足を止められたら、私はどうしたらいいんですか?」
     彼にとってそれは逃げる目的ではなく、あくまで、マヨイの意志を尊重しようとした結果なんだろう。
    「やさしいひと」
     マヨイは苦く笑う。
     けれど、一彩の吐露をなかったことにしては、また『後悔する』ので。あなたが元気になった時には、私から勇気を出しますから。
     ちゃんと言葉を受け取りに、来てほしい。
     
    「忘れてなんかあげませんよ」
     今すぐに伝えられないもどかしさを埋めるように、眠る子の赤毛を指で愛でた。
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