名前「千景さん今日帰りゲーセン寄りましょマジでどうしても落とせんプライズがある諭吉溶かしたけど無理だったあれはチートにしか落とせん鬼畜仕様」
出勤の車中、助手席の後輩がソシャゲの画面を見つめながら、運転席のこちらのことはノールックで早口にそう言い切った。
「……人にモノを頼む態度とは思えないな茅ヶ崎」
「千景さんならいける、おねしす」
後輩はふてぶてしくも、iPhoneから目線を外さず二度目のお願いと来た。俺は青に変わった信号を確認して、ゆっくりとアクセルを踏み込む。
「……いいよ、行こうか。クレーンゲームの筐体蹴り上げて落としてやるよ、そのゲーセン出禁になるね、おめでとう」
バッ、と元から大きな目がまん丸に見開かれて、やっとゲームから顔を上げてこちら見る。そういう顔がいちいちおもしろいから俺はこんなしょうもないことを言ってしまうんだな。
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