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    rony_fff

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    現パロのアスシン
    限界営業マンのアスとパティシエのシちゃが出会う話
    全然完成してません!
    続きはいつか書きたい……

     アスラン・ザラ。大企業の優秀な営業マンで、入社当初から新規顧客を獲得しまくる期待の新人だ。その上、仕事ができるだけではなくルックスと性格も良いときた。才色兼備とは彼のためにある言葉と言っても過言ではないだろう。唯一の短所といえば、真面目すぎるあまり仕事に没頭し過ぎて社内の飲み会や打ち上げなどにほとんど顔を出さず、〝人付き合いが悪い〟と思われていることくらいだ。顧客接待は業務の一環と捉えているため別だが、騒がしい場所を得意とはしていないようだ。
     いつも終電間近まで働き詰めているアスランだが、今日は特別疲労困憊していた。社内で重大なエラーが発生した挙句、担当部署だけでは手に負えないと営業担当のアスランにまで飛び火したのだ。困っている人を放って置けない性格ゆえ「できません」とは言えず、エンジニアの友人が雑談混じりに話していた知識を集結させてなんとかピンチを乗り越えてみせた。さすがに慣れない業務に長時間集中しすぎて頭が痛い。血糖値が低下しているのか、いつもならこんな時間に絶対に食べたくならないであろう甘いものを身体が欲している。
     ほとんどの建物から灯りが消えている街で、ぽつんと電気がついている店が目に入る。『デスティニー』と書かれた看板の下にはケーキのイラストが描かれたボートが置かれている。どうやら洋菓子専門店らしい。ちょうどいい、何か買って帰ろうと思い立ったアスランは、吸い寄せられるようにドアノブに手をかけて入店を知らせるベルを鳴らした。
     遠くからではそこまで見えていなかったが、ショーケースの中身はまるで色とりどりの宝石みたいだった。苺の赤、メロンの緑、レモンの黄色──キラキラと輝くそれらは、子供の頃に親にせがんで買ってもらったことや親友と一緒に「美味しいね」と笑いながら食べたことを思い起こさせる。ずいぶんと昔に忘れていた、アスランにとっての大事であたたかい記憶だった。
     しばらくショーケースの前で呆然としていると、奥からバタバタとこちらに走ってくる音が聞こえた。
    「すみません、お待たせしました!」
     白いコック帽を被った青年はこの店のパティシエらしい。赤色の大きな瞳はケーキに乗せられている苺と同じくらいの輝きを放ち、白い歯を見せる桃色の唇もまるでフルーツのようで──。
     一瞬にして、この青年にアスランは強烈に惹かれてしまったのだ。
    「あの、お兄さん……? 大丈夫ですか?」
    「あ、ああ、すみません。あの、ケーキを買いたくて……何かおすすめとかありますか?」
    「それなら、桃のタルトはどうでしょう。 今が旬なんです」
    「じゃあ、それを一つ。お願いします」
     きっと箱に入れられるのだろうと財布を用意して待っていると、青年は何か思いついたのか奥から小皿を持ってきてアスランに話しかけた。
    「良かったら店内で食べて行きませんか? お客さん、すごい疲れた顔してるし。ゆっくり休んでいってください」
    「でも、時間も遅いし、迷惑なんじゃ」
    「ああ、それなら問題ないです。この店、平日は夕方から朝まで営業してるんですよ。あなたみたいな人に利用してほしくて」
     青年は小皿にケーキを盛り付けると、カウンターから出てアスランを席に誘導する。店の奥には五席ほどのカフェスペースがあり、モダンな木製のテーブルと椅子で統一されていた。戸惑いながらも案内された席に着くと、ケーキの横にクリームが添えられた小皿がアスランの前に差し出された。
    「頑張ってる人が一息つける場所を作りたくて、お店を開いたんです。今日は誰も来ないかなぁ、なんて思ってたんですけど……あなたが来てくれました」
     ふわりと優しい笑顔を向けられているはずなのに、真紅の瞳に見つめられると心を見透かされてしまいそうで。そのギャップがとても美しいと思ったアスランは、青年自身に興味を持ち始めてしまった。
    「あの、名前は……」
    「俺の名前ですか? シンって言います。シン・アスカ。お兄さんは?」
    「アスラン・ザラです」
    「じゃあ、アスランさん。どうぞ召し上がれ」
     青年──シンが見守る中フォークを手に取って口に入れた瞬間、クリームの甘味と桃の程よい酸味が口内に広がる。お互いに喧嘩せず相乗効果を生み出し、さっぱりして飽きずに食べれる味だ。こんなに幸せな気持ちになるケーキを食べたのは初めてな気がする。
    「どうですか? お口に合いました?」
    「すごい美味しいです。甘いものが得意な方ではないけど、これはもっと食べたいって思う味だ」
    「良かった。そう言ってもらえると、作った甲斐がありますね」
     もぐもぐとタルトを食べ続けるアスランをよそに、シンは一度厨房に向かうとラッピングされたクッキーの詰め合わせを手に取って席に戻ってきた。こちらの種類も豊富らしく、チョコレートやアーモンド、紅茶風味のものまでバリエーションに富んでいる。
    「これ、試作品で作ったんです。甘いもの得意じゃないって言ってましたけど……あんまりにも美味しそうに食べるもんだから。良かったら、是非」
    「いいんですか? ありがとうございます、シンさん」
     アスランはただ至れり尽くせりのサービスに感謝を述べることしかできない。最近仕事漬けだったこともありプライベートで人と話す機会など皆無だし、ましてや人の優しさに触れることなど久々すぎて心が洗われる気分だった。
    「シンでいいです。多分そんなに年離れてないし。なんかこう、ムズムズしちゃうので。敬語も使わないで大丈夫ですよ」
    「わかった、では改めて。シン、今日はどうもありがとう。おかげで疲れもとれたし、美味しいケーキにも巡り会えた」
     はにかむシンにつられてアスランは自分の表情筋から力が抜けるのを感じた。
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