さいごに愛を「最期は銃で……なんて冗談さ。あんたにそんなことはさせねえよ」
自分のような――若かった自分と目の前の彼女では明らかに精神的な差があるとはいえ――あんな思いはしてほしくない。彼女への置き土産がそんなものではたまらない。
そう思ったところで、自分にとっての彼女の存在がどれほどのもので 彼女にとっての自分も同等のものだろう、なんて無意識に考えていた自分に苦笑する。
ずいぶん絆されたもんだと改めて思い知り、けれどそれは不快ではなく、そのことにまた苦笑がもれる。
「なあマリー」
名前を呼べば、なんだ、と簡素な返答。手入れした白い髪も左右で色の違う瞳も整った顔立ちもその簡素な返事をした声も、嗚呼やはり――
「きれいだな」
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