食から始まるロマンス「チャンピオンランクになったんです。この間、ジムチャレンジをしに来たばかりの、元気な男の子が」
珍しいこともあるものだ、とあたしは内心驚きながらも、手を動かしながら相槌を一つ。山盛りにおむすびが積まれた大皿を差し出せば、感謝を述べてから丁寧に合掌し、彼は普段通り黙々と食べ始めた。
だからあたしはその間に、先程の発言について考えてみることにした。
アカデミーで恒例の宝探しが始まると、この宝食堂兼チャンプルジムも、いつもより賑わいが増す。訪れる生徒は目まぐるしく、誰彼を全員覚えていることは正直難しい。けれど、今目の前で無表情のままおむすびを口に運ぶ男は、名前すら出さずにあの発言をしてみせた。つまり、その"元気な男の子"とやらは、記憶に焼き付いていて当然だという前提なのだ。
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