聞き分けの良いフリ聞き分けの良いふりをした
嫌われたくなかったから
お前が大好きだったから
お前のやりたい事を
否定したくなかったから
いつも笑顔でいた
頑張れよ、お疲れ様、流石だな、全くアイツは
そう言って笑っていた
そうすればお前が喜んでくれたから
何故誰も理解しないと嘆いていた
お前を見ていたから
全部飲み込んで
聞き分けの良いふりを続けた

愛している
お前のことを
お前がしようとしていることを
お前の守りたいものを俺も守りたいと思った
だからお前のそばにはいられなかった
そばに居たらきっと
聞き分けの良いフリは続けられないから
俺だけはお前を
無条件に受け入れられる男でありたかった
俺のわがままで寂しい思いをさせてごめん
でも俺が居なくても
ちゃんと幸せになれただろ？

ああ、愛してるよ
何故お前がと思わない日は無かった
お前が空を降りてまで守るべきなのか
そう思わない日は無かった
でもそれを声に出せば
お前を否定していた奴らと変わらない
その方が耐えられない
だから聞き分けの良いフリをした
納得しなくて良い分かってくれ、と
縋る様でいてわがままな
綺麗な目で俺を見るから
ただ一言「分かった」と声に出した
本当はこれっぽっちもわかれなかった
納得出来なかった
でもお前が降りると言うのなら
俺も共に同じ空から降りる
お前の翼を思い出して別の空を飛ぶ
でも見上げれば空はどこまでも繋がっている
俺たちは同じ空を見ている
共に飛べずともそれで十分だと言い聞かせた
なあ、俺さ
最後まで良い子だっただろ？
お前の最後まで良い子だっただろ？

綺麗な棺、大勢の人、悼み
涙は流さない
お前は俺に泣くなって言うだろ
俺の代わりはあの狼が泣いた
俺まで泣いたらお前が可哀想だ
愛していたよアイスマン
俺が翼を差し出した男
俺の片翼、俺の心臓、どうか安らかに
努めて微笑み墓標の名をそっとなぞった
最後まで聞き分けの良いフリをした
あの日の写真が酷くぼやけて上手く見えない

「なあ、トム、俺をおいて先に行くなよ…」
「っは、だめだなぁ俺」
「泣くなっ、て、お前が、言うと思って、泣かない様に、頑張った、けど、やっぱ、むりだぁ…」
このまま全て溢れて零れて溶けて消えれたら
またお前のそばに居られるのかな
空を見上げる男の胸には
酷い悲しみと
悼みがあった