めも貧乏学生の田辺は時給の良い病院の深夜警備員をしていた。夜中の病院は怖いが夜勤の看護師と会うだけで、どちらかと言えば病院の裏の駐車場で過ごす時間の方が長い
救急車や明け方の清掃車を迎え入れる受付みたいな格好だった。
夜中の3時に霊安室や病室の前を見回りで通るのはさすがに緊張したが、三ヶ月めにして幽霊をみたことはない
いつも通りの見回りだったが、その日は何だか光が漏れている部屋があった。いつも暗い部屋なのでちょっと不安だったが、ドアを押すと扉が開いた。
中にはご遺体だろうか、布を被った人が横になっていた。
不安だし、怖いので、電気を切って立ち去ろうとしたその時、布を被った人が起き上がった
「田辺くんかね…?」と聞き覚えのある声で話しかけてきたその人物は顔は知らない人間だった
しかし、声は明らかに大学の民俗学の教授、茂上熊吉の声だった
田辺は大学1年の時、茂上の民俗学をとっていてレポートを褒められたので覚えていた
「茂上先生!?」
「いかにも、僕は茂上です
君は奨学生の田辺君だね、一体ここは何処なんだ!」と言って教授は立ち上がる。
全裸で長髪の姿だが、田辺が知っている、いかにも世捨て人といった52歳の姿ではなく、はだ艶の良い長髪の美少年だった。
声は低く聞き慣れた教授の声だが、姿は全く別人だった。
二人の声を聞いてか、夜勤の看護師が来て驚いた
「よみがえり~!?」
とりあえず教授と思われる人物に服を着て貰って看護師と3人で話す
「ここは病院かね?」
「そうです、俺はここで夜間警備のバイトしてて、本当に教授なんですか?」
「いかにも、君は僕の授業をとっていたのに覚えとらんのかね」
「覚えてはいますが、見た目がちょっと違うから…」そういって鏡を見せて、茂上が驚く
「わぁ~なんだねこれは!これは凄いぞ!」
「若返ってますよね絶対!」と言うと、「それはちょっとわからん、僕は鏡にうつっていないんだからね!」と言う
見ると、本当に茂上の姿は鏡にうつっていない。看護師も驚いた。
「ご遺体だと思っていましたが、まさか幽霊!?」
茂上はゆっくり首を横にふる。
「いいえ、僕はね吸血鬼の事を調べにある村へ行ったはずなんです。ただちょっと記憶が曖昧でね。もしかしたら、これは僕は吸血鬼になっているかも知れませんよ!」ちょっと嬉しそうに言う。
「吸血鬼て鏡にうつらないんですか?」
「そうだよ、うつらないよ
君はシェアハウスの映画見ていないのかい?
ほら、本当に吸血鬼になったか確認しなきゃ
何かないかね、にんにくとか、日光とかさ」
看護師がちょっと心配そうにしている
「本当に吸血鬼なの?大丈夫なんですか?ニンニクチューブくらいしかないけど」
「わ、平気だ!ニンニクチューブ持っても何ともないぞ、うーん、どうしたら確認てきるかな…?」
教授も看護師も一緒に悩んでいる
「輸血パックはあげられないし、どうしましょう」「とりあえず日光で死んでしまう可能性があるから、暗いうちに家に帰ります」そう言って教授は普通に家に帰った
「なんだったんだろ」