私の元へ堕ちてほしくて「オーウェン様、お食事のお時間です。」
扉をノックすれば、なんだお前か…と、寝癖のついたオーウェン様が顔を出す。扉を開き、中に招かれれば、机は資料や反省文とやら紙の山で、これでは置けない。と苦笑いをする。
「別に、俺の為にわざわざ作って俺の部屋に来なくていいぞ?」
「いえ、こう押し掛けねばオーウェン様。食事や睡眠時間をお忘れになるので、見守るのも私『メイド』の務めです。」
「っ………はいはい、すぐしまうから……。」
バタバタと片付けをするが、私はそれを手伝う事は出来ない。あくまでも、ここはオーウェン様のテリトリー。気を未だ許してない彼の物を触ったら、折角距離を近付けたのを水の泡にする気かと強い意志で皿を持った手を強く握り直す。
「仮眠も大切ですが、栄養が足りてないかと思いますわ。」
「……はは。ともかく、最近の上層部はどうだ?」
やっと綺麗になった机の上に器を素早く置き、飲み物を用意する。オーウェン様のギフトがピコピコと動き、嬉しさを隠せていない。それを見て私は微笑む。椅子に座るよう促されつつ報告を催促されれば、答えるのが私の役目。
「上層部は相変わらず、といった言葉が似合うかと。オーロラ様は未だフランク様を……フランク様として見てませんし、教育チームは全体的に緩い為、オフィサーに陰口を言われてるのを見掛けますわ。見かけ次第、釘は刺してますが、全部となると手には負えません。」
サンドウィッチを食べながら、それで?続きは?と目で催促する姿が子供のようで愛らしく、そんな彼に一目惚れと助けて頂いた恩がある。入って少し経った時、私の足は冷たくなって動けなくなって、膝から崩れた際、周りのオフィサーは冷たい視線を向けた。でも、オーウェン様は上着を被せ、心配をしてくたさった。頬にあるギフトだって私と彼の大切な証明。譲る気は無い。
「オーウェン様、お口に合いましたか?」
「美味しいよ、料理が上手い。……飲み物なら得意なんだが。」
あら、とわざとらしく目を丸める。なんだ?と言った顔をして、首を傾げてから。視線を逸らしてから再度私を見る。困ったように眉を下げてから、小さく「でもなぁ〜…」という言葉を聞いた。
「オーウェン様、はっきり言ってくださいませ。」
「……ハイハイ。……そ、その、ホットミルクは好きか?」
「ホットミルク」
「ホットミルクだ。……ちょっとだけアレンジはできる。」
ホットミルクが得意料理?と心の中で首を傾げる。本人は真剣に言ってる様子なので私があーだこーだという権利はない。頂きますと言えば、待ってろ。と不器用に頭を撫でてから小さなキッチンへ入る。ことこと、と鍋で牛乳を温めるのか、と感心してみていると、くすくすと笑い声が聞こえ、なんでしょうか?と言えば
「子供だなぁ、もう少し待っててくれるよな?メイさん。」
と、子供に叱るに叱り切れてない親のように思えた。愛情を向けた優しい眼差しを私だけのものに出来れば、……いいえ、オーウェン様は前衛に立ち、皆様を導く者。私はその陰となり支えになりたい。なのに、彼は私の事を避ける。悲しいし、虚しい。
「ホットミルクがお好きなのも、お子様かと。」
勝手に言ってろ、と言わんばかりにセットした髪の毛を乱雑に撫で、してやったりと顔が笑顔に毀れる。私を通して誰かを見ている。嗚呼、私のじゃないのか。
私のオーウェン様であって欲しいのに、
私のオーウェン様になるには攻略が難しい
私のオーウェン様なのに距離が遠くて、
私のオーウェン様は皆の視線を集めている
隣に立つには力不足で、でも、いつか私を選んでくださいね?