ハッピーメリーバッドエンド(途中)デウス・エクス・マキナ
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少女は痛みの中で漸く目を開くことができた。しかし視界は砂塵に覆われて、この世界が如何様に変貌したのかを認識することは難しい。体を起こそうと身をよじる。だが、瓦礫に阻まれ脱出することはできなかった。汗と思って額を拭えば、血が流れていた。少女は痛みを思い出して歯を食いしばる。何が起こったのか思い出そうとしても、痛みが邪魔をした。
少女は幼かった。未だどこに出かけるとも母親に手を引かれていた。恐らく今日もそうだった。砂嵐の中で記憶の欠片を繋いでいく。暖かな手触りに今日が日曜日だったことを思い出した。家を出る前に、もう11月だからと心配性な母親が巻いてくれたマフラーは、瓦礫から飛び出した鉄骨に引っかかって少女の首を緩やかに絞め続けている。
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