ケモミミヤクザ新約【桜華忠臣と妖華帝国】【桜華忠臣】
妖華帝国の『桜華忠臣』とは人名ではなく、"妖華帝国の総帥"となる人物=禁呪を宿す人間の総称である。
現在コンパスの世界にてヒーローとして馳せ参じている『桜華忠臣』の前にも、老若男女問わず別の桜華忠臣が代々存在している。
妖華帝国の"禁呪"と称される存在を宿せる人間は、同時に「人間と妖怪の両方を統括するに足る者」=妖華帝国の主になり得る人物と定義される。
その能力と立場上『桜華忠臣』自身は妖華帝国の総大将として位置付けられ、同時に妖華帝国にその身全てを捧げる贄とも言える。
禁呪を受け継いだ人間は桜(染井吉野)を接ぎ木するように、それ以前に禁呪を宿していた『過去の桜華忠臣達』の記憶も継承する。よって、桜華忠臣の精神年齢や記憶の蓄積は実年齢よりも遥かに上回っている事が殆どである。先代の桜華忠臣と面識のあった者が次代の桜華忠臣に親しげに声を掛けられるようなケースも少なくない。
妖華帝国では禁呪の強化実験といった事象も行われている。当然妖華帝国の総帥や禁呪周りの情報は国家機密となる為、「総帥と呼ばれるこの男の素性は決して口にしてはいけない」とされている。
その為、他国にはまともに「妖華帝国の総帥」の情報が知らされることはなく、文字通り化かされたように掴みどころがない。「妖華帝国の総帥は長きに渡り一人の妖が務め、姿を留めず常に何者かに化けている」と噂されることもある。
【妖華帝国】
未だ人と妖が敵対していた時代、一人の戦人が禁忌の力を持つ妖"牛鬼"(現在では禁呪と呼ばれているモノ)と戦い、劣勢となる。戦人を喰らおうとする牛鬼であったが、戦人は命惜しさに取引を持ち掛けた。
「己を喰らわば其れまで。だが己はいずれ此の国を統べる者と成ろう」
「幾世を経て、己の子ら、孫らによって此の国は軈て世界すらも統べる事となる」
「其れが果たされた時、"世界を滅ぼした此の国に生きる命全て"を、お前に捧げよう」
斯くして"契約"は結ばれた。牛鬼がその身に憑くことで一命を取り留めた戦人は"人と妖"の双方を統括し国の指導者となり、人と妖が共存する「妖華帝国」の始まりとなった。
牛鬼は禁呪として"次の桜華忠臣"へと継承される際に"先代の桜華忠臣"の記憶も引き継がれるのだが、"初代桜華忠臣が自らと結んだ契約"には呪いを掛けて思い出すことが無いようにしている。その結果、己が時代を生き妖華帝国を紡いできた桜華忠臣達は「国や民を導き強国を創り上げていく使命」が「一人の戦人が命惜しさで己の滅びを先延ばしにした結果」であることを知らない。
当時契約の場を見ていた筈の妖達も牛鬼の力によって記憶に蓋をされ、真実を思い出せぬまま人と手を取り合い生きている。
【"亡国"となった妖華帝国】
コンパスにいる妖華帝国歴最後の桜華忠臣が世界統一を成し遂げた時、禁呪によって記憶の呪いが解かれ、忠臣は封印されていた記憶の全てを思い出してしまう。
記憶の呪いを解いたのは「理想を打ち砕かれ、幸福から絶望に突き落とされた人間」がこの上なく美味であるから。
「お前が愛した此の国は臆病者の命の代わりに生まれた」
「国の"忠臣"などと笑わせる。お前達が命を捧げてきた相手は国でも民でも理想でも無い、此の我だ」
「他者の手無くしては生きられぬ桜の様な此の国が、我が力無くしてどう生きてゆくと云うのか」
「約束の時は来た。悦びに浸る民、配下、そしてお前の"友"を前菜として喰らった後で、世界を滅ぼしたお前を喰ろうてやろう」
真実を突きつけられても尚、桜華忠臣は絶望しない。力無き桜の様な国を手放さない。
桜華忠臣は禁呪を操る最後の力を使い、禁呪に喰らわれる前に自らの手で勝利の宴に浸ったままの妖華帝国を、自らと禁呪諸共消し去った。
「我が愛し、この身全てを捧げた妖華を、我が友を喰らわせるものか」
「いつか散り行くのが桜の定めと云うのなら、お前達は散り際を知らぬままで良い」
「此の国を滅ぼすのは貴様では無い。我只一人だ」
世界統一を成し遂げた筈の妖華帝国が化かされたように一夜にして滅んだ様は共に戦った同盟国ですら説明がつかず、やがて妖華帝国の存在は謎を残したまま歴史から姿を消すこととなった。
只一人、無二の友であった一人の指揮官だけが知っていた。
【正史ルート臣】
理想の為に戦い抜き"国と友を愛するが故に"国を滅ぼした「亡国の総帥」
【イレギュラー臣】
力に溺れたが故に理想を忘れ"国と■を顧みぬ暴君と成り果て"国を滅ぼした「亡国の王」