レンズ越しの黄金色ふと背中に掛かる重みが増えていることに蛍は気づき、そろっと後ろを見る。木賊色の髪は微動だに動かないがいつもなら見える意志の強い黄金色の瞳は隠れている。
「…魈?」
おそるおそる声を掛けてみるが返答はない。くっついている背中を離しても彼は全く動かず、座ったまま器用に居眠りをしているようだった。
珍しい、と思いながら蛍は魈の顔を覗き込む。彼はほとんど寝ないか眠れたとしてもとても眠りが浅い。蛍が声を掛ければ彼はすぐに返事を返して、瞼をすぐに開けてしまう。それが今居眠りをしている。
彼にとって、蛍の側が安らげる場所になっているのかもしれない。それなら。蛍にとって嬉しいことこの上ない。
途端、あることを思い出して蛍はこそっとバックの中を手繰り、あるものを取り出す。そして、眠っている魈のそっと掛けて、普段とは少しだけ違う姿にほぅっと見惚れた。
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