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    pwは3338で統一していたと思います。

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    プライベッターだと私が管理しきれなかったのでYJ♀の娘が主人公の夢小説を再録
    ポイピクには名前変換機能がないのでヒロインの名前はデフォルトで不動れもん これも続きをかきたくてかけていない

    ##遊ジャ

    夢小説   夢小説

     天井近くに大きく取られた窓から差し込む陽の光。
     ほのかに温かい耳がらに舞い込んでくる小鳥たちの囁き声。
     長くてさみしい夜が終わり、澄んだ空気の間を朝の気配が静かに渡っていく。

     頬をつたう涙の感覚が冷たくて、私は目を覚ました。
     固くて古いソファ。ほつれかけた刺繍のついた枕がわりのクッションに、流行遅れの柄付きブランケット。夏や秋はこれでも快適に眠れたものだけれど、季節はいつしか冬にさしかかり、そろそろここで眠るには装備が足りなくなってきた。
     寝覚めはよくなかった。何か、とても悲しい夢を見ていた気がする。内容は覚えていないけれど、目覚めてなお、胸の中に杭を打ったような感覚を残す辛く重たい夢。
     ぶるぶると肩を震わせ、寝返りを打ってみる。体温が微かに移ったソファのざらついた表面に頬を擦り寄せ、二度寝を決め込もうと目を閉じる。しかし、じっとしていると寒さがどんどんブランケットの中に入り込んできて、仕方なく、私は身体を起こして伸びをする。
     寝ぼけ眼で、いつも通りの風景をぼんやりと眺める。
     誰もいないガレージ。ひとりぼっちの朝。
     ここには今、私と父の二人だけが暮らしている。もとは時計屋さんの母家だったこの場所を、若旦那さんの親切でお借りしているのだ。表の時計屋さんと、いくつかの部屋以外は、私と父が自由に使って良いことになっている。
     でも、父は仕事でいつもいない。夜中には帰ってきているようだけれど、私がいない時ばかりだ。ひどいときは一ヶ月の間一切顔を合わせないなんてこともある。
     昨日も、父が帰ってくるのではないかと思って、わざわざガレージのソファで待っていたのだ。でも、今朝も私はひとり。仕事が忙しくて家に帰る暇もなかったのだろう、わかってはいるけれど……。
    「良いのよ。お仕事なら仕方ないわ」
     そうひとりごち、頬を軽く叩いて、私は立ち上がった。

     十六年前……、母は私を産んですぐに亡くなったらしい。
     とてもきれいで、格好いい人だったと、父は幼い私に聞かせてくれた。そのころは、キッズスクールの同級生がみんなお母さんに迎えにきてもらえるのが羨ましくて、よく父の胸に縋って泣いていた。そういうとき、父は大きくて分厚いアルバムをたくさん持ってきて、母のことを私に紹介してくれた。
     金色の髪に、すみれ色に透き通った瞳。西洋人形のように白い肌。すらりと高い身体。美しいひと。
     母の姿は教科書や雑誌でも見ることができたけれど、父の持っているアルバムの写真の彼女は、もっと溌剌として、輝いて見えた。

     鏡越しに、自分の姿を見つめる。
     ——金色の長い癖っ毛に、あじさい色の目。白い肌。日本人離れしたその容姿は、母に生写しだった。
    「おはよう、れもん」
     そう言って、鏡の中の自分に笑いかけてみる。自分は、冴えない曖昧な微笑みを浮かべ、小首を傾げて私を見返してきた。
     不動れもん。それが私の名前。
     WRGP初代チャンピオンにして、このネオ童実野シティを救った英雄・不動遊星と、ライディングデュエル元世界王者ジャック・アトラスの娘。デュエルに愛された天才の血を一身に受けた稀有な存在。
     でも、私は、父のように優しくおおらかな笑顔も、母のように自信とエネルギーに満ちた力強い笑顔も作れない。デュエルは嫌いではないけれど、昔から喘息が重く、身体を動かすことが得意ではなくて、母が私に遺してくれたDホイールも乗りこなせない。
     お人形のような女の子。きれいな顔に、きれいな身体。無関心を隠さない瞳の色。臆病で、視野が狭くて、よく言えば穏やか、悪く言えば凍土のように冷たい性格。
    「……あまり卑屈になってはいけないわ」
     蛇口を捻り、きんきんに冷やされた水で顔を洗う。
     ひゃ、と、驚いて思わず声が出てしまう。自分では目覚めていたと思っていたものの、どこかに残っていたらしい微睡の気配がスッと頭から抜けていく。視界が冴え、意識は洗われていく。濡れた顔を拭うために自分用のタオルを探そうとして——
     ふと、視界によぎる強烈な違和感。
     いつもの洗面台。鏡の向こうに立つ、いつもの私。そのはずなのに、洗面器の白い陶器の上には、私の知らない誰かの歯ブラシが四本、コップの中に入っている。
     よく見ると、私専用のタオル掛けがなくなっている。隣にどっしりと置かれた洗濯機の銘柄が違う。タオル置き場が洗濯機の上から脱衣所の手前に変わっている。棚の中に入っているはずの化粧品やヘアゴムはきれいさっぱりなくなっていて、代わりに男性用のヘアワックスや高そうな香水が所狭しと並んでいる。
     慌てて廊下へ飛びだし、ガレージに降りて、私は目を疑った。父の古いDホイールと母のお下がり、その隣に、見覚えのある黒とオレンジのDホイールが停まっている。
    (あれは……クロウさんの?)
     それだけではない。父がいつも使っているメンテナンス用のデスクトップは二十年も前の型にすり替わっていたし、壁の所々に、第一回WRGPのポスターが貼られている。
     謎が謎を呼び、私はガレージの真ん中で立ち尽くしてしまう。
    (どうして……? クロウさんが昨晩のうちに来ていたの? そうだとしても、家の中のものがこんなに入れ替わっているのはおかしい)
     つとめて冷静に判断しようとしながらも、混乱した頭は父の顔を描き出す。私は先ほどまで自分が寝ていらソファに駆け寄り、自分の携帯を探す。どこにもない。嫌な想像に手が震えた。
     不意に、居間の方で足音がして、私は慌てて背後を見た。
     見覚えのある、しかし一度も会ったことのない人がそこにいた。
    「遊星、おはよう。起きているならコーヒーを淹れてくれ……」
    「お母さん」
     その優美で涼しげな瞳を見上げ、私はそう呟いていた。
     その人は私を見る。天使を思わせる美しく気高い顔で、動揺の色も見せず、私の頭から爪先までを見た。そして、
    「誰だお前は!!」
     と、絶叫した。
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    Replies from the creator

    うーん

    DOODLE断念したものを、女体化で恐縮なのですがせっかくなので掲載します。PKSP金銀です 死ネタ・キャラの実子の存在 ご注意ください
     すぐ戻ってくるからと、言いながら頬にふれたいいかげんで優しい唇のこと、きっと死ぬまで忘れない。
     彼は戻ってこなかった。冷ややかな永遠の存在を教えて、それだけ残して、シルバーから静かに立ち去った。言い訳はいくらでもつく、足下がぬかるんでいたのだろう、頭の打ちどころが悪かったのだろう、その人は不具だったのだから仕方なかろう、シルバーだってそのときその場にいれば同じようにした。だが、蕭条と霧雨に濡れた皮膚、不健康に血管の色を透かして青白く、今にも内側から破けそうな、またすでにいくらか硬直もはじまってさえいるその身体を前にして、彼女はすんでのところで自らの錯乱を抑えた。女の啜り泣き、警察があたふたと場を検証する足踏み、雨が街を洗う音、全てが遠かった。揺らぐことなく闊達で、晩年は老成したおだやかな目で妻をよく守った、この男。こんなところで、あえなく、失うことになろうとは。へたり込んだ姿勢から上半身だけを彼に傾け、血色の引いた唇に最後のキスを返したとき、ふと、彼の固く結ばれた右手に何かを予感した。開くと、硬い外皮に包まれた植物の小さな種がいくつか、傷ひとつなく守られていた。
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