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    しゃもじ

    タル魈しかないとおもう

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    しゃもじ

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    タル魈

    ゆびきり⚠︎注意
    ・タル魈できてる
    ・事後







    「ねぇ、今度一緒にスネージナヤに行こうよ」

    窓の外に浮かぶ満月が、ぱちりと瞬く彼の瞳を柔らかく照らす。何故、と問いたげな甘やかな蜜色。その目元を緩く撫でながら答える。

    「俺の大好きな故郷を、君に見せたいから」

    軽やかに舞い落ちる淡雪。痛いほどに澄んだ空気。艶やかな氷に包まれた湖面。
    どれも自分には懐かしく大好きな、そして今いる璃月には存在しない景色。


    「雪合戦するのも楽しいよ。雪だるまも作れるし、氷上釣りもできる。ちょっと準備が大変だけど。あ、そうそう。新雪を握って食べてもいいね」

    いつの日か、彼が隣国との境にある雪山でぽつりと零した言葉を思い出し、どう?と顔を覗き込めば、僅かに眉を顰め、目を伏せられてしまった。

    「…我は、ここから離れられぬ」

    それは、彼がかつて交わした岩の神との古の契約。
    しかしそれらは、岩の神と氷の神の新たな契約により、今やその効力を失っている。その事は彼も理解している筈だった。
    だが、例えそうだったとしても。
    今まで何千年と彼の存在理由そのものであったその契約は、今もなお彼をこの地に留め続けているのだろう。

    「…まったく。正直、妬いてしまうよ」

    あの飄々とした長躯の美丈夫を思い返し、苦く笑う。
    訝しげにこちらを覗き込んでくる瞳に何でもないよと返し、誤魔化すように相手の前髪をくしゃりとかき上げ、露わになった額に口付けを落とす。

    「これからは、君が行きたいところに行けばいい。やりたいこともいくらでも好きにしていいんだ。それとも、俺と一緒に行くのは嫌?」

    は、と息を飲む音。同時、目尻の上がった切長の瞳が、僅かに瞠られ小さく揺れる。
    目は口ほどに物を言うとは、彼のためにあるような言葉だとぼんやり思う。

    「あはは、嘘。冗談だ。…今すぐでなくていい。いつか君が、俺と来てくれる気になったら、その時は一緒に行こう」

    ね。約束、と。右手の小指を差し出す。一瞬の躊躇いの後、ゆるりと相手の小指が絡む。
    小さな小さな、取るに足らないようなありふれた約束。
    けれど、それは彼にとっての大きな意味を持つに違いなかった。

    「ただし。嘘ついたら氷漬けにされちゃうから、気を付けてね?」

    そうにっこり笑って言えば、口がへの字に曲げられ、ぷいとそっぽを向かれてしまった。

    「我は、約束は違わぬ」

    小さく呟かれた一言に笑みを深めながら、情事の余韻が消え、すっかり冷えた肩を引き寄せると、布団をたぐり寄せ相手を包み込む。

    「うん、楽しみにしてる」

    腕の中の小さな温もりを抱き締め、その背をゆるく撫でながら、ゆっくり瞼を閉じいつかくるその日を思い描く。

    何もかもが白銀に覆い隠された世界に佇む、ひとりの少年夜叉の姿。
    この世の業にその身を焼かれながら、それでも背筋を凛と伸ばし、幾千年も穢される事なくそこにあり続けたひとりの仙人。


    その彼が白に染まる姿はきっと、残酷なまでに美しいに違いなかった。
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