(上)ちきんさん転ちゃんと自転双子の冒険ファンタジー 今日は天気も良くお散歩日和だ。
だから、双子の弟シャルドネを誘ってお出かけをしている。
「ルティ、今日はホグズミードに行くか?それともピクニック?」
どうする?
とシャルドネが質問してくる。
ちなみにルティとは私シャルロットの愛称だ。
「……今日はホグズミードの近くにある……大きな木の下でゴロゴロしたい」
「そうか、ルティがそう望むのならとことん付き合…………」
シャルドネが私の頭を撫でる手を止める。
何かが聴こえる。
私たち双子は聴覚を研ぎ澄ます。
(この声はセバスチャン……と女の子の声だ)
「なんだ?セバスチャン、女と揉め事か?こんな昼間っから?」
しゃーないな、行ってやるか。
シャルドネはそう言いながら、私の肩に片手でポンポンと軽く触れた。
私も首を縦に振る。
とりあえず様子を見に行くことにした。
――――
声がする方に向かうと、やはりセバスチャンと女の子が口論し合っていた。
でも興奮しているのはセバスチャン1人だけだったが。
「どうしたんだい?」
シャルドネがセバスチャンに声をかけると、彼はようやく私達の存在に気が付いた。
「やあ2人とも。ああ、彼女はセレスティア・トワイライト。セレスティア、彼らは僕の友達でね。こっちが双子の姉シャルロット・デ・フォール」
私はペコリとお辞儀をする。
「こんにちは」
セレスティアはニコリと微笑みお辞儀を返す。
「……で、あまり紹介したくはないが……こっちは弟の――」
セバスチャンが紹介し終える前に、シャルドネはセレスティアの片手をそっと掴み、彼女の手の甲にチュッとキスをする。
「私はシャルドネ・デ・フォールと申します、お嬢さん」
以後お見知り置きを。
そう言いながら、シャルドネは彼女を魅了するようにニコリと微笑んだ。
……またやってる。
シャルドネも懲りないわね。
「……へっ?あ、あわ、お嬢??ありがとうございます???」
セレスティアはこういうのに慣れていないのか、顔を熟した林檎のように真っ赤にさせながらアワアワと慌てふためいている。
「やめろ、彼女はそういうのに慣れていないんだ」
セバスチャンがすかさず、セレスティアを後ろに引っ張ってズイッと代わりに前に出る。
シャルドネからできるだけ遠ざけるために。
「顔真っ赤にしちゃって、初心で可愛いねぇー」
シャルドネはというと、彼女の反応を見てニヤニヤしていた。
「……何か困りごと?」
私は話を逸らすために2人に聞いた。
「え?!あ、私はいつも通り困っている人がいるかな〜って散歩がてら巡回していたんだけど……その時、荷台がボロボロになって困ってた女の人がいて」
セレスティアさんは顔の熱を冷ますために、自身の手でパタパタと扇いでいた。
「僕は罠だと思ってる。相手の目的が何なのか分からない」
「でも、困ってるって言っててね」
「だからそれが罠だって言ってるだろ」
「まぁまぁお二人とも」
シャルドネが珍しく仲裁に入った。
ほんと、珍しい。
「セバスチャン、興奮しているところ悪いが……お嬢さん、誰にどんな依頼を言われたんだい?詳しく聞かせてくれないか?」
「えっと、その女の人にね……白い化け物に襲われて羊を取られた、取り返してきて欲しいって言われたの。それと、その怪物の住処はココって教えてくれたわ」
地図を開いて森の片隅のほうを指差した。
「驚いた。初対面の女の子に、丁寧に場所まで教えてくれるとは、随分と優しい女性だね」
「だろ?絶対に罠だ」
「でも、怪物の住処かもしれないわ」
「実際目撃された場所とは離れているじゃないか」
「それで?その白い化け物とやらは何だ?」
シャルドネが2人に聞く。
「最近、禁じられた森に化け物が2体現れたらしい。噂ではかなりの大型なんだと。だが、僕は直接見たことないから真実かは分からない」
「森のどこら辺だ?」
「僕が聞いたのは湖付近だと聞いた」
セバスチャンはそう言いながら、地図にセレスティアが指し示した場所とは離れた場所を指差した。
「ほぅ……なるほど」
シャルドネは顎に手を添えて考えている。
そこは最近遊びに行ったけど、そんな化け物私は見たことがない。
気配も感知できなかった。
……あれ?
もしかしてその化け物ってまさか……。
「それで?君はその依頼を引き受けるというわけだね?」
「そのつもり。困っている人がいたら助けるべきだわ」
「だから――――」
またセバスチャンがいかに危ないかを力説している。
私も彼女のことが心配だ。
私はそっとシャルドネの袖を手で引っ張る。
シャルドネは意図することが分かったのか、軽く頷いてくれた。
「分かった分かった。私も同行しよう。丁度、私らは今日オフでね。それでいいんじゃないか?」
私はブンブンと首を縦に振って同行する意を示す。
「何2人は呑気なこと言っているんだ?!明らかに罠だろう!」
「罠だったら……まぁ、そん時はそん時だよ」
ねー!と言いながら、シャルドネは私の方を見てきた。
私もウンウンと頭を縦に振る。
「あら、着いて来てくれるの?ありがとう。頼もしいわ」
「ほら、お嬢さんだってイイって言ってくれている。それとも何かご不満でも?」
シャルドネはまたニヤニヤと笑いながらセバスチャンを揶揄う。
「……分かったよ、僕も行く。心配だからな。本当は諦めてほしかったけど」
彼女は優しすぎる
とセバスチャンはボヤついた。
そうね……セバスチャンも付いて行ったほうが良さそう。
「おいおい拗ねんなって。勇敢で心優しいグリフィンドール生がやるって言っているんだぞ?我らスリザリン生もやらなくてどうする?」
行くぞ!
シャルドネはそう言いながらセバスチャンの肩を叩く。
私は一瞬後ろを振り向いて確認する。
そして、置いていかれないよう彼らの共まで小走りで歩いていった。
意外と目的地の場所がここから近かったので、目的の場所まで皆んなで歩いて向かうことにした。
――――
「セレスティア、本当にここか?魔法生物の足跡すらないぞ?」
セバスチャンが茂みに隠れながらセレスティアさんに小声で聞く。
「確かにここって聞いたのだけど……」
あれれ?
セレスティアも困惑しながらもヒソヒソと小声で答えた。
シャルドネはそんな2人を見ながら、堂々と道の真ん中を通っていく。
無論私もだが。
「あ!おい!隠れろよ!万が一化け物が僕らに襲ってきたらどうする?」
セバスチャンが小声で私達を引き止めようとする。
「大丈夫だろ。あり得るとしたら……あそこだ」
シャルドネが指差す方向には洞窟がそこにあった。
「一応聞くが……洞窟の中かもって、その女性から聞いていたかい?」
シャルドネが彼女にそう聞いた。
「……聞いてないわ」
「ははっ、流石にそこまでは言わなかったか」
シャルドネは鼻で軽く笑う。
「……ねぇ、これ……」
私は地面にある足跡を指差す。
「人の足跡ね」
セレスティアが地面を覗きながらそう呟いた。
ピキッピキッ
その時、私達の近くで枝が折れる音が複数した。
……ようやく姿を現したわ。
私は静かに刀を魔法で出現させた。