大魔道士の価値を正しく“理解”する大臣モブおじさん「お待ちしておりましたよ大魔道士殿、どうぞこちらへ」
おれの手を引く豪奢な服を着こなしている恰幅の良い男はこの国パプニカの大臣である。
田舎の一般家庭育ちである自分が、まさか一国の大臣と“こんな”関係を結ぶようなるとは誰も思いもよらないだろうと自傷気味に小さく笑い、いつものように寝室へ通される。
しかし、いつもと違うのは寝室に他の男がいることだ。男はおれと目が合うとベッドからおもむろに立ち上がる。
「申し遅れました、彼は私の大切な友人でしてね。以前から大魔道士殿を大変好いておられるようで、ずっとこうして会う機会を伺っていたのですよ」
その友人もまた、何かしらの地位についているのか大層な服を着ている。年の方も大臣と同じくらいだろうか。軽く会釈し言葉を交わすと男は息を荒くし、いかにも興奮していますと言わんばかりである。
我ながら『勇者の魔法使い』という肩書きは大したもんだな。と、馬鹿らしくなる。特に話すこともないと後ろへ下がろうとするが大臣に肩を捕まれ動けない。
「彼はシャイでしてね、少々口下手なところもありますが信頼における人物ですから御安心を」
強く掴まれ引くこともできず、それどころか友人のおっさんの胸へと押し付けられる。顔を見上げると歪んだ笑みをしており気色悪い。
「私の友人が今日をどれだけ楽しみに待っていたか…さあ大魔道士殿」
さあ、と言われても…どうすりゃいいんだよ?
「あのよぉ大臣サン、アンタの友人サンと会う時間くらい作ってやるからさ。こんな場所じゃなくて後日ちゃんと…」
「ここが一番適していますから、何の問題もありませんよ?」
ここまで言われて気付かない程おれもマヌケではない。即座に逃げようとするも大臣が耳元でささやく。
「彼は軍の司令部に身を置いている者です。大魔道士殿ならこの意味お分かりでしょう?」
このカッコで司令部。将官クラスだと考えれば…おれに拒否権なんて存在しない。
諦めて抵抗を止めると、満足したように慣れた手付きで大臣がおれの服を剥ぎ取っていく。目の前の男も何が楽しいのか肌をベタベタ触ってきて気持ち悪い。
「全ては大切なお仲間の為に。いやはや本当に大魔道士殿は勇者一行の鏡ですなぁ」