不審者あり「本部の竈門から各ゲートのチーフへ、不審者が外周通路にいるとの情報あり、突破されないように警戒してください。身長180ぐらいで白いジャージに緑のライン…」
「1番ゲート栗花落より本部、取れますか?」
「本部より1番ゲート、どうぞ」
「いま不審者らしき人が通過しました。2番ゲート方向に向かっています」
「本部了解、各ゲート引き続き注意してください」
「2番ゲート我妻より本部!なんか白いジャージのおっさんが3番ゲート方向にダッシュしていくんですけど!」
「本部了解、3番ゲートは取れますか?」
「3番ゲート、じゃねえ。俺は伊之助だあ!いまそのおっさんを走って追っかけてるぜっ!」
「本部より3番ゲート、いや伊之助!やめろ!持ち場を離れるな!」
「炭治郎!おっさんが4番ゲートの鶏冠野郎と格闘してるぜ!」
「本部より4番ゲート!玄弥!大丈夫か?」
「プスッップスップスッ……」
「本部より4番ゲート!応答願いますっ!」
「あァ?その声は竈門かァ?」
「本部より4番ゲート!あなたは……誰ですか?」
「げんやのあにきだァ!」
「本部より4番ゲート!ってことは実弥さん?どうしたんですか?」
「おい竈門ォ、こんなにかっこいい黒スーツでバイトしてたら、玄弥がアイドル本人と間違われるだろうがァ!」
「本部より4番ゲート!っていうか実弥さん!!わざわざ玄弥のバイト先まで乗り込んでこなくてもいいじゃないですか!」
「かわいい弟の仕事姿を見に来て何がわるいだァ!おい!」
「2番ゲート我妻より4番ゲート!そんなに大声でインカムしてこないでっ!鼓膜が破れるよっ!」
「ぎゃんぎゃんうるせえなァ……とにかく!玄弥はすぐにバックヤード担当に変えろォ」
「1番ゲート栗花落から4番ゲート。不死川さん、今からはさすがに無理です。もうお客様も入ってきてますし」
「それなら、このゲートのもぎりは俺が代わってやらァ」
「本部から4番ゲート!勝手に担当変えないで!白いジャージのもぎり係とかないから!」
「しかも、ジャージの背中に殺すって入ってるぜっ!」
「は?本部より3番ゲート!持ち場の3番に戻ってくれ!」
「3番ゲートじゃねえ、俺は伊之助だって言ってんだろうがァ!」
「“おい、玄弥。兄ちゃんに逆らうのか?”
“逆らうとかじゃなくてバイト先には来ないでってあれだけ言ったのになんで来たんだよっ!”
“テメェ…兄ちゃんの言うことをもう聞かないのか?”
“家に帰ったらなんでもするからさ”
“なんでも、か?”
“あー、もうわかったよ。今日は俺が先に風呂に入るから!”
“ならいい、待っとくわァ”
プスップスップスプス、
4番ゲート不死川から本部取れますか?」
「本部から4番ゲート、あ、あのさ。玄弥、いろいろ大丈夫か?」
「2番ゲートから4番ゲート、最後がすごく色気のある音に聞こえたけど…」
「うん、とにかく兄ちゃんが大人しくなったから大丈夫。俺はこのまま4番ゲートで続けるから」
「わかった、本部の悲鳴嶼統括に実弥さんを引き渡してくれ」
「了解」
実弥は悲鳴嶼によって本部に連れてこられ、本部でこっぴどく怒られた。けれど、長男は下の子が可愛いものだという実弥の言葉に竈門が深く共感し、なんとなくいい感じになってしまったので警察には引き渡されずに帰宅した。
なおその頃、この騒動をとらえた画像が続々とSNSにアップされ始めていた。
#不審者を捕まえる4番ゲートの人がかっこよすぎる
そのタグはコンサート名のタグともにまたたく間に拡散し、玄弥はアイドル顔負けの人気を博するようになる。
とはいえ、玄弥は誰のものなのか。あの無線を聞いた全員には分かりすぎるぐらいに分かっていた。
おわり