ディープブルーの恋 後日談窓の外は大粒の雨が降り注いでいた。
連日の大雨、それから迫りくる巨大台風のせいで、長らく部屋に閉じ籠もるしかできないでいたホークスはぶすくれた顔で水槽に頬をこすりつけている。
「餅みたいだな」
コーヒーを片手に水槽の前を通るときに、思わずそう溢せばじとりとした黄金色の瞳がこちらを見つめてくる。
分厚いアクリル越しでは言葉は届かないため、聞こえていないだろうと思っていたがどうやら口の動きで何を言ったのかはバレていたらしく不服そうにされた。
あいも変わらず外ではごうごうと風が巻き上がり、雨足は殊更強くなったようだ。屋根を叩く雨音が一段と激しさを増していた。
そんな中で泳ぐことも浮くこともせず、水槽の底でアクリル板に白い頬をぺたりとくっつけたホークスは、時折苛立つように鰭を揺らしていた。
3689