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    mitsu_ame

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    審神者くん×長義くんの南国バカンスいちゃいちゃ小話でーす!🌺🌴🍹✨💕🐠

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    数種の葉物と、スライスしてよく水にさらしたタマネギ、ぶつ切りの白身魚。ブラックオリーブは、子供舌の我が主が苦手だから少しだけ。その分オイルは容赦なく。カットしたトマトを種ごと沢山入れるから、酸味は十分。酢は入れない。岩塩を削り入れ、すべてが合わさったボウルの中を底からざっくり混ぜる。ラップをして冷蔵庫へ。食べる直前にピンクペッパーを散らせばサラダは完成だ。
    調理がひと段落すると、途端に聞こえる波の音に注意が向く。普段の生活では絶対に拾わない音階。ざざん、ざ、ざざざ……耳を澄ますまでもなく、明瞭に漣は響く。ベイエリアに建てられたコテージは、ものの数十歩も歩けばビーチに出られる。到着してすぐ、荷解きもせずに飛び出したのは彼の方。自分が前に立つことが多いから、彼の背中を追うのはなんだか新鮮でくすぐったかった。

    追った先、白い砂浜とエメラルドグリーンを湛える海。陽はまだ高く、水面をきらきらと輝かせていた。
    広く、ひろく横たわる海。寄せては引き、引いては寄せる水のかたまり。それに、少し、ほんの少し、恐怖心を抱いたことを、彼は見抜いて、そして穏やかに笑った。
    臍を曲げたって良かったけれど、せっかくのバカンスにそれは時間の無駄というものだ。だから、「大丈夫だよ」と微笑んだ彼の腕に思い切り甘えて、波打ち際を歩いた。それが、六時間前のこと。

    食べに出たっていいんだよ? と言ったのを押し切って、マーケットで食材を買い込んだ。野菜に魚介類、肉、パンや米、基本的な調味料、アルコールもそれなりに。
    ヒトの細胞は凡そ3か月ほどで入れ替わると言う。彼を独り占めできるのは、このたった3泊4日。その間、少しでも俺の作った食事で血肉を造ればいい。向こう三月(みつき)のひっそりとした独占。
    俺の身体は君が造ったのだから、逆の行いだってしてみたい。そう思ってコテージに戻ったのが二時間前のこと。

    ふたり一緒に荷解きをして、でも、調理はひとりでやりたかった。キッチン立ち入り禁止を言い渡された彼は、リビングとそこから出られるテラスをゆきつ戻りつしたり、やれ、主寝室のベッドが大きい、シャワールームがガラス張りだ、と探索結果を報告しに来ていた。それが途絶えたのが、30分ほど前のこと。

    「さて、どの部屋にいるのやら……?」
    呟くけれど、一棟丸々とはいえ、カップルやファミリー向けのコテージだ。気配を探るまでもない。西側、客用寝室に当たるベッドルームへ向かう。
    白く塗られたドアはほんの数センチ開いており、その隙間から、西日が赤く鋭く射している。金色の、わずかにメッキの剥げたドアノブをそっと引く。きぃ、と小さく蝶番が鳴いた。瞳がまぶしく光りを受け止めて、慣れる頃。靡くカーテンと、ベッドの天蓋。ドアと同じく白いチェストとクローゼット、ドレッサーの家具一式。あわく朱色に染まったそれらが目に入る。

    こちらはあくまでサブなのだろう。主寝室の大きなベッドとは違いセミダブルのそれに、彼は寝転がっていた。アッパーシーツのさらに上、枕に頭を乗せることもない恰好。恐らくはベッドの足元側からばふりと倒れ込み、そのまま……という具合だろう。
    ここは海に面した部屋ではないが、それでも窓からはざざ、ざざ、と波音が聞こえた。穏やかなそれはさぞや眠気を誘ったろう。垂れた天蓋も差し込む日差しを和らげている。
    飴色の髪がやわらかい夕陽を透かしてべっ甲のようにあまやかだ。頬はほんのり杏子色をしている。鼻の頭がちょっぴり色が濃いのは、日焼けをしたからだろうか。ふすふすと寝息を立てる口元がわずかに開いていて、舌先が、チラリと見えた。

    それに、なんだか。ぐわりと腹の底から湧いてくる、熱のようなものがあって。

    肩を掴んでぐるりと仰向かせる。穏やかに上下する腹を跨いで乗り上げる。
    「んぁ?……ちょーぎ? ごはん?」
    そこまですればさしもの彼も目を覚ます。もにゃもにゃ喋るくち、チラチラ覗く舌先。『ん』で止まった唇にむちゅぅと吸い付く。
    眠っていたせいか、元々高めの体温がいつもより高い。きゅんとする腹の熱に従って熱いそれを食んでいると、寝ぼけた彼も、口付けに応え始める。暫しそうやって唇を押し付け合っていたけれど、むにりっ、と両頬を挟んでくる両手によって一時停止を余儀なくされる。至近距離で見つめた瞳は、覚醒の色が宿っていた。
    「……君が見た途端歓声を上げたロブスターは真っ二つにしてグラタンに仕立てたよ。アクアパッツァと一緒にオーブンの中。後はチーズが焦げるように仕上げの火入れをするだけ。パンも一緒に焼くからすぐ食べられる。白身魚はカルパッチョ風のサラダに。オリーブ控えめ。でも味が馴染むまでまだ時間がかかるから。だから、」
    『ごはん』の問いかけの答えを矢継ぎ早に。待ち時間の言い訳も添えて。ぽかぽか暖かい手のひらがきゅうっと顔を包むのが、まるで焦らされているみたい。あぁ他に、なんと言い繕えばよいのだろう。
    「おいしそう……かわいい……」
    きゅぅ。まだ両頬は捕まったまま。けれど、彼の下から掬い上げるようなキスに、つぶやきは溶け消える。
    おいしそうなのもかわいいのも君の方だ!
    叫び出したい気持ちで、でも身体はもっと即物的に。彼の服を弄ることで言葉の代わりを果たした。

    仕立てた夕食が胃に収まるのは、さて、何時間後のことだろう。
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