『ヤキニク因果律』.
焼肉を食べる時は、大俱利伽羅を誘うと決めている。
「お待たせしましたぁ、始まりの五品です~」
店員はそんな言葉とともに手早くテーブルを一杯にして、コンロを点火すると去って行った。
幣本丸御用達焼き肉屋の食べ放題コースは、まずサラダ・白飯・野菜焼きと肉のプレート二種の計五品が提供され、それを食べきったらグランドメニューを制限時間内自由に注文できるスタイルである。
「ん」
「あぁ」
大倶利伽羅がサラダを差し出すのを受け取って、反対に白飯を渡す。網の半分ほどを使って大倶利伽羅が肉を広げるので、残りの半分を更に半々、野菜とホルモンで埋めていく。もうすっかりと、手慣れたペース配分。
「いただきます」
大俱利伽羅は、牛なら色が変われば食べられると言って憚らない。国広が野菜を並べ終わる頃には、たしかに両面の色づいた牛ロースを取り上げて、コメの上にはらりと広げている。無駄話を嫌う男の口が大きく開き、吸い込まれるように肉と白米が消えていく。それを眺めながらりんごサワーを――飲み放題は別コースなので始めから自由に吞める――ちびちびやるのもいつも通りだった。
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