みつみつつくようすい黄金色。半透明。親指の爪ほどの大きさ。ゆびさきでそっと摘まむのにちょうどよい。
大俱利伽羅の手指でそうすると、褐色の肌に淡い色がよく映えた。
灯りは窓からの月光ばかり。まるく満つ月夜の晩。薄明るい光に浮かぶ、きらきらとかわいらしい、切り出したばかりの宝石のような飴玉ひとつ。
「舐めて」
蜜のように甘い命令。視線を上げる。満月色の瞳が飴玉よりよっぽど甘く光っている。
「このまま?」
「このまま」
すこしだけ牙見せるみたく笑う。試されてる。ならば挑んでやろう。
負けん気がくすぐられてしまう。たぶん、自分だっておんなじように笑っている。
口を開く。差し出された飴玉を迎え入れるために。含む一歩手前、止まって、目を合わす。大俱利伽羅はじっとこちらを見ていた。舌先を伸ばす。摘まむ指は避けて、金色だけを捉える。甘い。
大俱利伽羅の肌には触れないまま、ちいさく舌を動かして甘味を味わう。舌が受け取る味が増すほど、口の中が潤んでいく。
一度舌を引っ込めて唾液を飲み下した。濡れた飴玉は透明度を上げている。再び挑もうと口を開いたところで大俱利伽羅が動いた。
「ンむ」
指ごと口に含まされる。反射的に舌で押し返そうとして叶わない。指と飴玉とに当てた舌が皮膚と砂糖の味を拾って、また、唾液が溢れる。
「ん……ッふ、ぅー……!」
舌で押して、噛んで怯ませ、追い出そうにもうまくいかない。ただただ強い甘味に舌どころか口内がふやけるような気さえする。
「っア、ぅ、」
より奥まで指が入ると、舌が上手く使えない。じゅぅ、と嚥下の要領で咥内を締める。フ、と大俱利伽羅の笑う気配。こんにゃろ、思って、歯を立てる。皮膚の弾力、骨の硬さ。逃がさないよう噛み締める。僅かずつ溶け消える蜜のかたまりを、捕まえた指先から舌で掠め取った。
頭を引いて咥えていた指から離れる。口内に残るのは飴玉だけ。舌に乗せたそれを見せつけてからまた口の中に隠す。
「あんたも」
挑み返す。真正面から対峙した金の眼がぎらぎらと濡れている。黄金が迫って吐息が混じって睫毛が触れそうになってもまだ瞳は合わさったまま。唇が割り開かれて、舌が入り込んでくる。甘露を奪っていこうとするのを防いで絡めて吸い上げる。ひとりの時より余程はやく口内に甘み潤みが満ちていく。競うようにそれを味わって、また舌を擦り合わせては飴玉を転がした。
黄金の蜜が尽くふたりの間で溶けるまで。夜は深まり、月は昇る。