白馬に乗った王子様は子猫を迎えに来るのか『場地、お前動物詳しかったよな』
「好きだけど。それがなに?」
『今すぐうち来い』
「は?なんで」
だよ。と最後まで言葉になる前に、耳元に当てた携帯電話は通話終了を告げていた。
休日の朝っぱらから電話をかけてきた暴君、佐野万次郎の天上天下唯我独尊的言動は今に始まったことではない。理由もなく呼び出されて、意味のわからない暇つぶしに付き合わされることも少なくない。
どうせ今回も同じことだろう。このまま無視して猫の集会所へ行って戯れるのもいいと思うが、後日会った時めんどくさいことになるのが目に見えている。
場地圭介はため息を吐いて愛機のキーを手に取った。
幼い頃から通いなれた、大きな家の門をくぐって中に入る。休日ということもあり、敷地内は静かだ。平日の夕方になれば、自身も通った空手教室によって喧しくなる。ここに住む4人兄妹の兄たちの友人が集まるとさらにうるさい。
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