バイオレット 本当にただ、なんとなくだけれど。爪を紫色に塗った。
仕事からの帰り道でドラッグストアに寄った時、爪のケア用品を見ていたんだった。やすりを手に取った瞬間、ちらりと視界の中に入ってきたネイルポリッシュたちのなかに、その紫色はぽつんといた。
明日が一日オフだから塗ったにすぎない。一日も経たずに落としてしまう。自分でも何でこんなことをしているのかはわからないけれど、なんとなく、駅前に花屋ができたせいだろうな、とは思っている。
ひまわりが高々と咲いていた。夏の風物詩、と黒板を用いた看板に絵が描かれていた。駅前の花屋でひまわりを買う人生。楽し気ではないか。なんとなく、それに対抗したくなったのだ。
ネイルポリッシュの名前はなんたらバイオレットというものだった。バイオレット、すみれ。すみれって確か、先天的に香りを感じられない人がいたはずだ。
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