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    暁/houhoupoteto

    @houhoupoteto

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    オロイフ、ヌヴィリオ、タル鍾SS置き場

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    暁/houhoupoteto

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    フリ+ヌヴィ+リオ/💧🌧️⛓️
    この世は歌劇

    ※ほぼカプ要素ないです
    ※💧ちゃまのお話
    ※🧞‍♂️任務、キャラスト、伝任内容含む
    ※歌詞お借りしまくってます。(友成空 様/ACTOR)

    ##ヌヴィリオ

    Hey everyone!!本日はご来場頂き大変嬉しく思うよ!!
    さぁさぁこれから始まる物語。喜劇か悲劇か。君の眼で確かめてくれたまえ!!



    『僕にはもうムリだよ』
    『早く終われ早く終わってくれ…』
    そんな陳腐な言葉はもう何万回も涙とともに出て行った。
    鏡の中の僕に、命じられた言葉たちはもはや呪い。
    謙虚や弱さ、そんなものは仮初にして。
    威圧感や迫力を嘘で纏って。

    窓の外から鳥の声。差し込む光。まるで映影のワンシーン。
    …そんなの最悪だ。
    今日も仮初の日々に幕が上がる。拍手が鳴る。
    僕は神様と戯る役者。
    終らない夢の中で僕は今日も誰かのふりをする。
    ようこそハリボテの世界へ、
    今日も誰かのふりをする。



    「こんな子供が殺人だって?」
    「うむ。調べはついている。また、当人も認めている。」
    「…ふーん。そんな裁判に僕も出なくちゃいけないのかい?休みたいなぁ」
    フカフカの椅子の背もたれにこれでもかと背中を押し付けて。
    少しでも独りの時間が欲しいんだ。
    「水神たるものいかなる時も…」
    「あーもーわかったよヌヴィレット行くってば」
    …まぁ、そんなこと出来ないってもう知ってるんだけどね。

    毎日毎日、カレンダーに印をつけた。皆を助けられた時の記念にしようと思って、どれくらいの日数たったのかを視覚的にわかるように。
    …そんなもの、もう炭になった。
    何をすればいいのかもわからない。水位は上がる。僕を頼る。
    …僕は何もわからない。

    『被告人、前へ』
    だいたい、この場所から見下ろすことがもう。僕はあそこに立ちたいのに。嘘偽りのない演技を。
    黒と灰色の髪を持った10代の少年がそこに立つ。
    なにやら口頭試問の会話が聞こえるけどそんなのどうだっていい。早く終われ。早く。
    「俺が殺した。それ以外に何を話すことがある?ここにいる皆様方もお忙しいだろう。さっさと終いにしないかい?」
    その言葉が耳に差し込まれた。
    「静粛に。ここは厳粛な場である。必要な証拠や論弁は必須なのだ。」
    「…わかったよ。最高審判官サマ?」
    なんだ。なんなんだ。なんでだ。
    人知れず、神座の座面に染みができた。
    「どうして…そんなに素直でいられるんだ…」
    つぶやいたその言葉は、こんな高いところからでは誰にも届かなかった。
    ガタッ。ざわめく観衆。一瞬、その少年と目が合った。
    離れないと。泣いているところなんて、見られるわけには行かないんだ。
    出来るだけ冷静に、出来るだけ『つまらない』と言わんばかりに。僕なら出来る。五百年、そうしてきたんだから。
    震える足を前に出して、背後のドアを閉めれば暗闇。
    「はっ…は、…う、うぅ…」
    自分の膝を抱いても許される時間。



    「叙爵式?誰だって?君が?」
    「落ち着きたまえ」
    「いやだって君、そんなことしたことないじゃないか。誰なんだい?」
    「名は『リオセスリ』と言う」
    知らない名前。僕が知らない。もうこの国にはヌヴィレットという上に立つにふさわしい者がいるのに、こんなにも無知な自分など必要なのだろうか。
    「十二年前の殺人事件の犯人としてメロピデ要塞に検挙された人物だ」
    「犯罪者!?何を考えてるんだい!?」
    「フリーナもこれらの書類に目を通したまえ。…埃を被っている」
    「え、あ…」
    届けられる書類に目を通すのも億劫で、必要に駆られ急かされるもの以外のものは山のようになっていた。
    …知らせてくれていたのか。
    「何、知らぬものでもないのだ。幼少期より少々関わりはある」
    「え、あれが初対面じゃなかったのかい?」
    「『対面』という意味ではそうだ」
    「ストーカーとかやめてくれよ…」
    「どういう意味だろうか」
    ヌヴィレットがこんなにも熱心になることも珍しい。自分で爵位を与えるというのに嬉しそうな真顔。
    …君はやっと人間に少しは興味を持てるようになったんだね。
    「まぁ、好きにしなよ。僕は忙しいから代わりに祝辞を述べておいてくれ」
    「後日お茶会を誘われているが?」
    「それいかなきゃダメかい?」
    世界一、嫌いだ。
    みんなみんな嘘をまとって笑って。嘘まみれの僕が正直な事を言ったって何も面白くない。ボロを出さないようにも細心の注意を払わなければならない。…演説のほうが何倍もマシなんだ。



    「失礼するよ。おっと…これはこれはフリーナ様」
    「君は…」
    「はは、対面するのは初めましてだな。リオセスリだ。メロピデ要塞を任されている。」
    「あぁ、君が…」
    結局お茶会にはでなかったから、知らなかった。
    あの時の少年が、ここまで大きくなっている事に気付きもしなかった。
    もう、十年も経ったんだ。こんな儚い時間で人間はこんなにも立派になるんだ。
    「ヌヴィレットさんがどこにいるかご存知で?」
    「いや、僕も待っている所で…」
    あれ?
    よく見れば服は濡れて、脱いだコートからは水が滴っている。
    それに、顔やかろうじて見える腕が、うっすらと赤くなっている。
    「ど、どうしたんだい?」
    「ん、あぁ…原始胎海についての報告なんだ。…濃度が明らかに上昇している。何か対策を講じないとそろそろ本気でヤバいと思って…フリーナ様?」
    震える。身体が。
    止まらない。止まらない。
    きた、ついに。まだなにもつかめてすらいないのに。
    「とっ溶けたらどうするつもりだったんだ!!」
    唐突な怒号に目を丸くしていた。
    「心配してくれてるのかい?あぁ…申し訳ない。そこまでの濃度ではないと調べた上だ。それでもここまで症状が出るとは思わなかったが…」
    なんで、どうして、そんな事が出来るんだ。
    「っ…今、できうる限りの対策についてはヌヴィレットと協議しているっ…だから、そんな危険なこと…しないでくれ…君も大切な民なんだ…」
    下を向き、拳を握る。こんな時ですら嘘しか…言えない。
    ゴツ、ゴツ、と。その大きな靴が音を鳴らして近付いてくる。
    どうしよう、ヤバい。なにか勘付かれたかな。あまりにも気弱すぎたか。バレたら終わりだ。きっとこの人は鋭い。やめてくれ。やめて…
    「…大丈夫か?」
    「ふぇ?」
    自分を見上げるように膝をついたその人は、大きな体を小さくして、本当に心配してくれているようで、
    「あ、はは…いや、まさか僕は神だ!何も心配することなどないさ!」
    「…嘘つかなくてもいい。神様だって疲れるときはあるさ。無理はしないでくれ。ヌヴィレットさんが悲しむ」
    そう言って頭に乗せられた手は大きくて暖かくて。…辛かった。



    『人々はみな海の中に溶け、水神は自らの神座で涙を流す』
    夢から目覚めたら、誰もが只の髑髏。
    結局、僕は何をしていたんだ。
    仮にも神を演じてきたくせに、国民を救えない。
    水位が上がる。予言は本当だった。これも嘘であったらどんなに良かっただろう。
    あぁ、終わるんだ。本当に。
    心の水底で、ほんの少しでもホッとしてしまう自分が憎い。
    それよりも、僕は、国民を救えない大量殺人者だ。
    誰か僕を罪に問うてくれ。もう無理なんだ。幕を下ろしてくれ。頼むから…










    以前よりも低くなった天井で、軋むようになったベッドで。
    窓の外から鳥の声。差し込む光。まるで映影のワンシーン。
    …そんなの最高だ。

    見せ掛けの衣裳はおさらばさ、今脱ぎ捨てて。
    フリルを脱ぎ捨ててTシャツに着替えよう。
    御伽話よりも可笑しい人生という名の舞台。始まったばかりだ。
    朝食は何にしよう。夜ご飯は?昼は何をしようか。舞台の稽古にも行かなくちゃ。あぁ映影の撮影もあるんだった。

    軽やかにベッドから降りてくるりと回る。腕を上げてお辞儀をするんだ。

    Hey everyone!!本日はご来場頂き大変嬉しく思うよ!!
    さぁさぁこれから始まる物語。喜劇か悲劇か。君の眼で確かめてくれたまえ!!
    Acta est fabula!!
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