「なぁ蛍ちゃーん、闘おうよーねーねー」
タルタリヤはふらついた足取りで蛍に近寄り肩を組む。
「ちょっと」
「なんだーもう酔ってるのかぁ」
パイモンが蛍を遮りにやついた顔でタルタリヤの周囲をふよふよと漂う
「酔ってない今すぐ闘いたい闘いたい」
「もーなんだよこの物騒なこどもは…その点鍾離はさすがだよなー」
同じ円卓の反対側に座っていた鍾離はその光景を見守っていた。
既に結構な量の酒瓶が卓上に転がっており終盤を思わせる。
「ねー蛍ちゃんものもうよー」
「未成年の飲酒はダメだぞもう鍾離連れて帰ってくれよな悪酔い禁止」
そう言われてワンテンポ遅れてそうか、と立ち上がった鍾離はやだまだ帰らないーとのたまうも足に力が入っていないタルタリヤに肩を貸し、その場を後にした。
扉がしまるまでは重心は鍾離にあったのだが、扉が閉まるや否や今度はタルタリヤに移る。
「もうさー先生、無理しなくて良いんだよ」
「んー…何がだ…」
既にほぼタルタリヤに任せきりで歩いている鍾離はなんとか答える。
「先生モンドの酒苦手なの弱み見つけちゃったかなー…ってどしたの先生」
じーっとその瞳で見つめられると吸い込まれそうになる。
「ん、いや、公子殿は整った顔をしているなと改めてな」
「んなっ」
「公子殿、暖かいな。安心する」
すり、と寄せられる頬が熱い
酔ってる所に手を出すのはいけないことだよ。とこの一瞬で何度自分に戒めただろう。
「…このあとは、どうするのだ…」
そんなことお構いなしに煽ってくるこの男にはもはやタルタリヤしか見えていなくて、
「…このまま一緒に帰ろうか、先生。覚悟しててよね」
「のぞむ…ところだ…」
そう言ってつかの間の眠りについた鍾離を背負って帰路についた。
◆
「なんだぁよだれ垂らして寝てるぞおーい、タル…」
「しー。良い夢を見ているのだろう。眠らせてやってくれ。」
人差し指を口許に当て、微笑む瞳はタルタリヤへ。
「でも良いのかぁ公子とかいってるやつがこんな緩んだ顔で寝てて」
「いいさ、疲れてるのだろう」
そう言って背中にかけものを掛ける姿はまるでパイモンには夫婦のように見えて、
「オイラ、じゃまか」
「ははは、そう気を遣わなくて良い」
ふわりと乗せられた手のひらに包まれながら、いつまでも夢の続きを見ていた。