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    白流 龍

    @houhoupoteto

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    ヌヴィリオ、タル鍾SS置き場

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    白流 龍

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    ヌヴィリオ +フリ+🐰/🌧️⛓️
    心、快晴となれ

    ※頼むフリちゃんに救いがあって、笑って欲しいの意を込めて
    ※フリメインのためヌヴィリオ要素かなり薄め(しかも付き合ってない)
    ※保護者的なヌヴィフリ
    ※相変わらずヌリ任務未ですがちょっと要素あり

    ##ヌヴィリオ

    同日、正午。
    「…と、報告はこんなところかな。」
    リオセスリは定期の報告を終えたところだった。
    「んじゃ…俺は戻るとするかね。」
    意味深な間を開けて、書類を纏め振り返ろうとしたその時、
    「リオセスリ殿、少々頼みがある」
    「…ん、何だ珍しいな。あんたがそんなかしこまって。どうしたんだ?」
    珍しい、ヌヴィレットの神妙な視線でそう言われ、リオセスリはあらぬ期待を少しばかり持ってしまうがなんのことはなく表に出さないよう気を付ける。
    「フリーナが…そちらを視察したいと言っていてな」
    「はぁ?視察?」
    唐突な提案に間の抜けた声が鳴る。水神がこちらの環境を気にかけるなんて聞いたこともなかったのだ。
    「まぁ、ただの見学と言って差し支えないだろう。あまり難しく考えないで欲しい。あれは、少しでも自分にできることを探しているのだろう。…ご協力願えるだろうか」
    机の上で手を組み、なんのことはない、とでも言うように静かに淡々とそう述べる。
    「いや…別にいいけどよ…。なんつーか…大丈夫か?」
    「…問題ない。ケアはこちらでしよう。これも勉強なのだ」
    「んー…はぁ、わかったよ。あんたの頼みとあっちゃ断るわけにもいかねぇだろ」
    「すまない」
    「あやまんな。日時は…午前中で、日程はそちらさんで決めてくれ」
    「了解した」
    深くは喋らず、しかしどこか二人でしか分かり会えないような会話をしてその場は別れた。



    同日、午前。
    「フリーナ、許可が降りた」
    「えっあの…下に行くってやつかい?はぁ…僕からふっておいてなんだが緊張するなぁ…なんかしといたほうがいいことってある?」
    正直に述べると、ヌヴィレットが誘導しこの結果に落ち着いているのだがそれには気付く訳もなくただ驚きと焦りの声を露わにする。
    「…手土産を用意しようか。そうだな。リオセスリ殿は紅茶が好きだ。茶菓子でもどうだろうか」
    「お菓子…」
    「300モラまでだぞ」
    「遠足じゃないんだよもう人がせっかくマジメに考えてるのにさ」
    「ふむ、和ませようと思ったのだが」
    何を考えているのかは表からでは全く読み取れないヌヴィレットとは違い、すぐに表情に出てしまうフリーナはコロコロと表情を変える。…しかしそれがフリーナには助かっていた。
    「幼稚すぎるんだよ…でも、そうか…良かった」
    「…フリーナ、もし限界だと思ったら無理せずに言うのだぞ」
    「え…うん、わかったよ…」
    『限界』とはなんのことか、なんとなく想像がつくフリーナは少し身震いしたが、流石にこれは悟られてはならないと我慢した。



    数日後、快晴、午前。
    「おーご機嫌麗しゅうヌヴィレットさん。と…フリーナ様は?」
    パレ・メルモニアの裏手、メロピデ要塞の入口の上に立ち、爽やかな風に吹かれながらこれまた爽やかな笑顔で手を振るリオセスリ、とその横で両手を上げているシグウィン。
    「わざわざすまない。…これ、フリーナ」
    その爽やかな陽気の要因であるヌヴィレットと。
    フリーナはそのすっぽりと隠れていた姿を、顔だけひょっこりと出して、まるで人見知りの子供が久々の親戚にでも会うかのように。…当の本人はそれよりも緊張しているのだろうが。
    「あ、えと…出迎えご苦労お忙しい中痛みいるよリオセスリくん」
    心曇り気味の表情を出さないようにと去勢を張った筈なのだが
    「お久しぶりですフリーナ様。歌劇場以来かな?」
    「…」
    すぐに崩されてしまった。
    「ちょっと公爵」
    こちらは隠れる気がなくとも隠れてしまうサイズのシグウィンが、背伸びまでしてリオセスリに小声で注意する。それに合わせて腰をかがめたリオセスリがバツの悪そうな表情を見せる。
    「あー…と、俺は今日案内させてもらう管理者のリオセスリだ。こちらはシグウィン看護師長。忙しいので外れるが最後にお茶会でもやりたくてね。このメンツでどうかな?」
    「あぁ、大丈夫だ」
    その返事を聞いて明らかに嬉しそうな顔をしたリオセスリの足を軽く蹴って、二人に「また後でね」、と挨拶をして先にシグウィンは降りていく。
    その姿を確認したリオセスリは、先ほどとは打って変わって真面目な顔をした。そんなものだからフリーナは背中を伝う汗を感じざるを得なかった。
    「…それとフリーナ様。きっと貴女は下に降りれば周りから軽蔑されるような視線を感じるかもしれない。下の連中は神の力に頼らずに己だけで生きている奴らだ。貴女の努力を知らずに楽をしているなどと勘違いしている奴らもいることを忘れないで欲しい。」
    姿に似合わず、自分の背丈に合わせて屈み、更には自分の身を案じるこの大男に対して信用しても良いという気持ちが嫌でも浮かんだ。…その内容はかなりシビアなものだったが。
    「…わ、わかったよ。」
    きゅ、と。ヌヴィレットの裾を掴んでいた手に力がこもる。
    「よし、それじゃあ早速降りようか。…お手をどうぞ」
    「えっ」
    「少し段差がありますので」
    「ぁ…ありがとう。気が利くね」
    「お褒めの言葉どうも」
    にこやかにレディとしての対応をしているリオセスリと、馴れない対応をされ内心助けを求めているであろうフリーナを見て、それこそ狼に襲われそうな兎でも見ているかのようで少し微笑んだヌヴィレットは気付かれないように咳払いをした。

    上で聞くようなエレベーターとは違い、低く響く下へ通りていく音。
    それはそれは長い。その間に簡単な説明を、今のうちにしておかなければいけない忠告を。
    「今の時間は大体が作業エリアで各々仕事をしている時間だ。中には特別許可券で朝から自由に過ごすやつもいるがな」
    「特別許可券…モラみたいなものかな?」
    知ってはいるがやはり実を聞くと別な世界なのだと思い知らされる。
    「そうだ。まぁ何もしなくても飯も食えるし寝床も与えられるから死にゃしないが何も楽しみがない。働けばそれ相応の対価が貰える。…理不尽な労働環境にはならないように気をつけてる。」
    「なるほど。」
    エレベーターに乗った瞬間から、管轄がフリーナやヌヴィレットからリオセスリに変わったのだと嫌でもわかるような、そんな内容。
    敬語など遣われずとも気にならない。もうここは関係がないのだ。自分に言い聞かせる。
    ゴウン、と大きな音がなり、海の下へと付いたことを知らされる。
    「あ…ありがとう…」
    そして何処までも紳士な対応であるこの男の視線は周囲に向けられ既に鋭くなっていた。

    どんなものを作っているのか。なんのために、どれくらい、どの程度の人数が、そのために動いているモラと特別許可券などなど。スラスラと何も読み上げるわけでもないのに説明され、ふんふんと頑張ってついていくフリーナ。
    ヌヴィレットは定期報告にて既に知り得ている情報であるがゆえ近場の者たちにこれは見世物ではないのだ、という視線を送る。
    作業の手を止め、様々な表情をしていた人々はその視線に当てられない様元の作業に勤しんだ。
    しかし、遠くまではその威嚇は届かない。
    『なんで神がここにいるんだよ。何もしてくれやしないくせにな』
    『なにかやってますってアピールだろ?』
    遠くから聞こえた会話が、嫌でも心に刺さる。
    頑張って、威勢よく歩いていたフリーナだが、限界が来ていた。説明をしっかりと聞くために上げていた顔を維持する力は既になく、手は自然にヌヴィレットの裾を掴んでいた。
    ヌヴィレットがため息を付き、口を開きかけたその時。
    ガァン
    唐突に大きく響いた金属音に耳が揺れる。
    フリーナがうつむいた顔をあげるとその音の主はリオセスリだった。
    「今ので聞こえないとでも思ってるなら耳かきしたほうがいいなぁ?え?それともわざとやってるなら…」
    射抜くように睨まれたその2人は逃げるように消えていった。
    「あ…ありが…」
    「さて、次は食堂にでも行きましょうか」
    感謝の言葉を遮り、打って変わって笑顔を見せるリオセスリを見て、これは管理の問題ではなく、これが世情なのだと考えさせられる。

    食堂についたが、まだ時間も早く殆ど人はおらず、機械が出迎えてくれた。
    「こいつはブラン。一日一回サービス食をくれるが中身はランダムだ。…その方が楽しいだろ?」
    「汁物は増やしてくれただろうか?」
    「あんたはほとんどここに来ないんだから意見は聞かねーよ。」
    「む、そうか」
    フリーナは久しぶりに少し笑った。
    この二人の会話を聞くとなんだか落ち着いた。公務でしか殆ど会っていない筈なのに、ヌヴィレットの表情はとても柔らかく優しい。自分に向けられるそれはどちらかというときっと親のようなものだ。

    その後は周りに人も少ないことも有り少し心も軽くなった。決闘場や郵便局、各部屋など見て回ったが金属製で所々錆びている以外は設備も行き届いていてなんとなく数日なら過ごしてみたいとすら思えてくる。それを作っているのがこの男なのだと思うと素直に感心してしまう。…また、それらを自分ではなく他に責任者として当てた者達の功績であることを素直に讃えている姿に。
    「さて、そろそろ看護師長の仕事も落ち着いた頃だろう。医務室で最後にするかな」
    「最近怪我はしていないだろうな?」
    「…関係ない話題はよしてくれ」
    「ほう」
    時折挟まれる会話に和む。そして更に和ませてくれる存在がそこにいた。
    「あら三人共ごきげんよう仕事は落ち着いたわよ」



    同日、不明、午後。
    フリーナは緊張していた。何度やってもお茶会には馴れない。なにか気を効いたことを言わないといけない気がして。
    「紅茶に砂糖は入れるかい?」
    「い、いらないよ子供でもあるまいし」
    「そうか?俺は2個いれるが…」
    「え、じゃあ3個…」
    「はいよ。看護師長たのむ」
    「わかったわ」
    トコトコと、自分専用なのだろう、足台に乗って手際よく準備する様子をヌヴィレットの横で見る。
    斜め前にリオセスリが座ったのは無意識にシグウィンが目の前のほうが良いだろうという考えなのと、少し邪な気持ちから。
    「ヌヴィレットさんは?水持ってきてないなら紅茶になるが…」
    「それで構わない」
    「アールグレイだっけ?」
    「そうだ」
    先程から、落ち着いた今だから、フリーナは不思議に思った。上と下でお互いに忙しく、会うにしても定期報告などの話し合いで余りにも短時間である筈なのに。こんなにも信頼しているような、このヌヴィレットを柔らかい表情にさせるリオセスリという人物。それを見てみたかったのが一番の理由だったのかもしれない。
    シグウィンが入れてくれた甘い紅茶を飲みながらそう考えた。
    そしてそれがとても納得の行くものだということも、充分にわかった。
    「音楽は好きかい?」
    「へ?」
    唐突な、全く予想もしていない角度からの内容に間抜けな声が出てしまう。
    「BGMにニューエイジかアンビエントでもと思っな。お疲れだろ?」
    「あ、ありがとう…凄く気が利くんだねリオセスリ、さんて」
    「…そうだ。それを自然にやってのけるのが彼の素晴らしいところだ」
    後半はヌヴィレットにだけ聞こえるように伝えたが、ヌヴィレットもその『彼』には聞こえないように、柔らかな声で、フリーナに微笑みかけた。
    …見たこと無い。なんだか知ってはいけないことを知ってしまった気がする。とフリーナは思った。
    そして軽く小突かれて思い出した。ずっと握りしめていた紙袋。
    「あっえっと…この時のために皆で食べようと思って持ってきたものがあるんだ。限定物のケーキで僕のオススメだよ」
    「おーわざわざありがとうな。美味そうだ」
    「甘い物好きならうちのミルクセーキも飲んでくれたらいいのに」
    「皿持ってくる」
    ぽすりと隣りに座って不満を漏らすシグウィンと交代でリオセスリはそそくさと立ち上がった。
    その後、誰かが誰かを気遣う事もない、気の遣う必要のない心地の良い会話が続いた。
    美味しいケーキも食べ終えて、リオセスリは切り出す。
    「神の立場にいるってのは楽じゃないだろう?大きく見せ、威厳を持って。高貴に振る舞い。下に見られないように。気丈に。…疲れないか?」
    この心地よさですっかり忘れていたフリーナは一気に現実に引き戻され声が小さくなる。
    「そ…それは…それが民のためでもあるんだ。僕はみんなの上に立たなきゃならない。みんなには、僕はちゃんとしているから安心してほしいと、伝えないといけない…」
    冷めた紅茶の揺れる姿を見つめて、できる限り淡々と、普段から思っている言葉を綴る。言い聞かせるように。
    …心地よかったはずなのに、思ったよりも気は許せていなかったようで。今やっと自分が全然紅茶もケーキも口にできていないことに気付いた。
    「…ここは海の下だ。」
    それを、リオセスリは見逃していなかった。
    「…?」
    「もう、公爵ったらわかりにくいのよ。あのねフリーナ様」
    リオセスリに新しい紅茶を注いで、その足で隣に来てフリーナの手を取る。
    「ここにはあなたがカミサマって気にしてる人なんていないのよ。だから…もう少し肩の荷をおろしてほしいのよ?」
    暖かい手が、じんわりと体まで流れてくるようで。
    暖かくて、頬にも暖かいものが伝う。
    「…あ、あれ…えっと違う…違うんだこれは…」
    「違わないわフリーナ様。自然と流れる涙には従ったほうがいいのよ?」
    その優しい大きな瞳を向けられて、溢れそうになる涙を堪えるためにヌヴィレットを見上げる。
    はっと、ヌヴィレットが柔らかな視線をこちらに向けているのを知った。
    あぁ、ヌヴィレットはこの為にここに来させたのか、と。
    実際、ヌヴィレットは自分で慰めの言葉は苦手なことは自覚している。だからこそ、この二人に託そうと思ったのだ。
    それを知った今、我慢はしなくていいのだとわかった。
    「…ぅっ…うぅぅ…」
    「抱きしめてあげるわ。暖かくて気持ちがいいのよ?泣く時は声を我慢しないこと。全部出しちゃっていいんだから」
    自分よりも小さい身体の筈なのに、とても大きくて暖かくて。久々に。声を出して泣いた。
    神がこんなにも泣いている。それを咎めるものは誰もいない。それがありがたく、心地が良いことにある程度泣き止んでから気付いた。
    リオセスリはその様子を見て心底シグウィンに会わせて良かったと思ったし、それがヌヴィレットの思惑なのだと思い視線を送る。
    ヌヴィレットはその視線に対し、二人に感謝を示す意味で微笑んだ。
    それに対して頬を染めた姿は誰にも気づかれずに済みリオセスリはほっとした。

    来たときよりも心が晴れやかになったフリーナは足取りも軽かった。
    数時間ぶりの爽やかな風を体に受けて表情明るくくるりと回る。その姿を見てリオセスリは笑顔で一言。
    「帰るまでが視察ですから気をつけてくださいねフリーナ様」
    「なっ君まで僕を子供扱いするのかい全く似た者同士」
    リオセスリは頭にハテナが浮かび、ヌヴィレットは軽く咳き込んだ。

    同日、夕暮れ、快晴。
    僕は水神フリーナだ。
    皆の上に立ち、皆のために自信を演じる。大丈夫。
    …それを解ける場所を見つけたから。
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