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    白流 龍

    @houhoupoteto

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    ヌヴィリオ、タル鍾SS置き場

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    白流 龍

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    ヌヴィリオ /🌧️⛓️
    君を、想う

    ※付き合ってない
    ※メ口ピテ就任後半年くらいの捏造

    ##ヌヴィリオ

    氷のその目を、君が背中に飾っているのを見かけて、やはり天理などは信用が出来ないと改めて感じたものだ。

    「…最近、彼はどうしているだろうか」
    「彼?」
    シグウィンと、久しく出来ていなかった茶会。
    彼が下に行った時、シグウィンも下に送ったのだが余りにも話題に出ない。管理者としての責務が重くなっているのではないだろうか。
    「えっと…公爵のこと?」
    「そうだ」
    あれは余りにも、自らを卑下しすぎるその姿が危う過ぎる。彼は人間ではあるが、まだ若いというのに修羅場をいくらもくぐって来ている。
    そういった者は、奢り、傲慢、自惚れ、そういったものに溺れている者を多く見かけるが彼は違った。
    この舞台に、まるで立ちたくないかのように。
    計らいも粋、頭の回転も早い。相手の能力を見抜く力もある。
    『俺には勿体過ぎる言葉ですよ』
    そう、笑って跳ね返されるのだ。まるで自分の能力を認める気がないように。
    …だから、与えた。『立場』を。
    自他ともに認めざるを得ない、その『役』を。
    悲惨とも言えるほどの下の環境が、改善しているのはシグウィンを見ればわかる。
    以前は疲れも見えることが多く、逃げるように上がってくることも多かった。
    それが、忙しいから、と笑い。なかなか会えなくなった。
    安堵もすれ、『悲しい』という気持ちも、知った。
    湯気のたつ、アールグレイの匂い。
    「珍しいのね、やっぱり公爵は特別かしら?」
    「…そうなのだろうな」
    元々円らな愛らしい瞳が更に丸くなった。
    「ごめんなさい。あまり下の事は話さないほうがいいのかと思ってたの。公爵は元気よ、安心してほしいの」
    微笑むシグウィン。いつの間にかそのように笑えるようになったのだな。
    「礼を言わないといけないな」
    「そういうの嫌いだと思うのよ公爵は」
    「ふむ、そうなのか」
    すると、シグウィンは指を口元に当てて何かを悩みだす。
    「ヌヴィレット様は公爵に会いたいの?」
    会いたい…それはわからない。彼が元気であれば、それでいいのだが。
    そう言われると。最後に見た、あの笑顔を改めて見たいという気持ちになる。
    「そうだな」
    「…うちはね、公爵にはたまにはこうやって日光を浴びて息抜きしてほしいのよ。でも『海の空も晴れた日はここまで光も届くし綺麗だろ?』とか言ってはぐらかされるの。どう思うかしら」
    「それは、健康的に問題があるな」
    シグウィンは静かに笑う。
    テーブルに置いてある書類。彼が纏めたもの。とても丁寧にまとめられている報告書。それに触れて。
    「次から定期的に報告会をしたらどうかしら?うちじゃなくて、公爵が直々に来るの。手紙のやり取りじゃなくてね。そうすればうちの心配も、ヌヴィレット様の気持ちにも応えられるでしょ?」
    「しかしそれでは彼の意思がないが」
    「ひとまず、仕事としてでもヌヴィレット様に会ってくれればそれでいいわ」
    「そうか」
    確かに、どう思うかはわからないが、使命であると言うならば、彼ならば嫌な顔せずやるのだろう。
    「じゃさっそく伝えておくわね。日程はヌヴィレットさんから直接公爵にお手紙してもらってもいいかしら」
    「承知した。…シグウィン」
    「ん?どうしたの?」
    帰ろうと、背中を見せたその小さな身体をくるりと回してこちらをみる
    「彼は紅茶が好きだと聞いたが、何が好きなのだろうか。」
    「うふふ、何でも好きよ。」



    ある程度日程を絞り、手紙にしたためた。返事は早く、私の休日前の夕方を指定してきた。
    流石だと、感服する。…しかしそこには君の思いはあるのだろうか。

    時計の音。心地よい。
    乾いたノックの音。
    入ってこない。
    「開いている」
    「…お久しぶりです。ヌヴィレット様」
    ゆっくりと開かれたドアを閉め、振り返ってから一礼される。
    「すまない。忙しいとは思うのだが、こうして直接話せたほうが良いと思ったのだ。」
    管理者となり約半年。一度も合わなかったこの青年は。また逞しくなったようだ。
    粗暴そうな顔つき、服装で、礼儀はわきまえた対応。…下では色々と苦労をしているのだろう。
    「君は紅茶が好きだと聞いた。一杯飲むだろうか?」
    「…あー、有り難いが遠慮しておきますよ。公務中だだからな。申し訳ない」
    一瞬、目を丸くしたので同意するかと思ったのだが。やはり私にはヒトの扱いがまだわからない。
    「ふむ、用意していたのだが」
    「あぁ、それなら茶葉だけ頂ければ戻ってから飲めるんで有り難いですね。はは」
    そう笑う表情は、あの時とまた違う。硬くて、一線を引いている。
    「座るか?」
    「いえ、ヌヴィレット様はそちらに腰掛けていてください。来ているのはこちらなので、構わず。」
    …なんだかとても、穏やかではない。ヒトだけでなく自らの扱いも、よくわからない。
    「まず、聞かせて欲しい。下でのことは、君の重荷になっているのではないか」
    崩さない、笑顔の表情。
    「は、あんたのせいで俺が下に縛られてるとでも?安心してくださいよ…俺は、俺に従ってるだけだ。もうガキじゃねぇんだ。嫌なことは嫌だと、ハッキリ言えるぜ?」
    呆れられている、のだろうか。
    「そんな無駄な事考えてないで、下は俺に任せてあんたは前だけ向いてりゃいい。…そのために俺を下に置いたんだろう?」
    間違いではない。のだが。釈然としないこの感じはなんだ。
    …ひとまず置いておこう。
    「…では、報告を頼む」

    いつも通りまとまった文章。読み上げられる、聞き取りやすい声。
    この印を押せば、終わりだ。
    「…扱いは、慣れただろうか」
    一枚目に印を押す
    「ん、あぁ元素か?そうだな…俺には合ってると思いますよ。鍛錬は欠かしてない」
    二枚目。
    「…そうか」
    三枚目。
    氷元素。何故。何度考えた所で答えなど出ず。
    天理が勝手に決めたせいで。同じであれば、ある程度思考は読めただろうに。…君の助けにも、なれただろうに。
    水を司る私との相性は最悪なのだろう。
    …先程から感じていることだ。
    「私と、君は、同じ立場の筈だが」
    四枚目、最期の書類に印を押し、問う。
    「あ?いやいや、あんたにゃ到底…こうやって話してるだけでも時間が勿体ねぇことさせてんなって思ってんだ」
    どこまでも、そうなのだ。
    「…言い方を変えよう。その敬語と呼び方を変えることを所望する」
    「…や、え?」
    明らかに狼狽する。私でもわかっている。しかしこうでもしなければ、君は。
    「今後私と会話する時は敬語は止めていただくよう。また、敬称も止めてくれ」
    「…ズルくないか?あんただって俺の事敬称つけてるじゃ…」
    肘をつき顔の前で手を組み、ため息を付く。そして、
    「リオセスリ」
    「…ぁ、ぐぅ…」
    目を見据える。一歩下がり、表情を隠されてしまう。逃す訳にはいかない。
    立ち上がり、前に立つ。…ふわり、なんとも言えない、初めての感覚がした。
    「どうしたのだ?リオセスリ。私の名を呼んではくれないのか?」
    「……っヌヴィレット……、さん」
    頬を染め、顔を背けるその姿を見て、
    「…ちょっと…無理、だ。もう、勘弁して、くれ…」
    私の中が、何かを感じている。それは不明瞭過ぎていて、言葉には表せないものだ。
    追い詰めすぎただろうか。テーブルに座り込んで完全に顔を見れなくなった。
    「そんなに、嫌、だろうか」
    「違う…っぅー…あんたは、民全体の上に立つ人だろ。俺は、あんたに貰ったこの立場で、それだけでもう充分なんだ…」
    それはまるで、自分に言い聞かせているようだ。
    「あんたと、…こういう、話をできる立場じゃ…こんな、プライベートな感覚は…」
    「問題ない」
    「あんたが、そうでも…俺、は…」
    「構わない」
    逃さない。認めさせるまで。君は、自由なのだ。
    「シグウィンが心配している。君を。その気持ちを受け取ってやって欲しい」
    「…それは、わかってる。」
    「…また、このような形で構わない。会えるだろうか。」
    「それは…」
    「これは私個人の、気持ちだ」
    頭を抱え、髪を乱暴に乱す。
    「…良いのかよ、こんな、プライベートな空間に、俺なんか呼んで。『個人的な関わり』は持たないんだろ」
    「執務室のためそう言うわけではないのだが…それは全く、構わない。むしろ私が懇願している時点で問題はない」
    はぁ、と
    諦めたようなため息。
    「…わかった。毎月、来る。どうせ誰かがやる任務だったからな。でもシグウィンには」
    「彼女の休みに会えればよい。…君は仕事でなければ来てはくれないだろう?」
    悩むように、泳ぐ視線。
    「来る理由が、それしかない。…だろ」
    「ふむ」
    これが今の限界、か。
    「君には、想い人はいるのだろうか」
    私の視界に、書類が空を舞い散る様子が映る。
    そのまま上を見ると、表情変えず見る見る赤くなっていく顔。
    「………ノー、コメント」
    慌てて拾い上げる様子を見て
    …そうか、と。
    しかしそれは私ではないのだろう。
    「すまない、プライベートすぎた」
    「いや、はは…少し驚いただけさ」
    …神の目が、違うだけでこの心のざわつき。
    万が一、今後そのようなことがあった時に私は、心から祝えるのだろうか。いや、祝わなければならない。私のことなど、どうでもいいのだ。
    ただ、ただ、君が。
    「…帰る、よ。また、連絡くれ」
    「これを」
    控えめな紙袋
    「ん、何…」
    「シグウィンから君は紅茶は何でも好きだと聞いた。あまり詳しくないのでな。適当に選んでみたのだ」
    あぁ、ここに来て、初めての笑顔
    「ははっそうかい。あんたらしいな。ちなみに俺は甘いものも好きだよ。覚えといてくれ」
    「…承知した」
    その台詞の中の、ある一言が、心に留まる。暖かくなる。
    「じゃ、またな。ヌヴィレット、さん…え、さんは良いよな?」
    「くく…無理なのだろう?構わない」
    「笑うなよ…」
    そうして、立ち去る背中を見て思うのだ。

    この者が心から愛され、この者が心から愛し、この呪縛を解き放ってくれるものが現れるのを、私は切に願う。
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