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    白流 龍

    @houhoupoteto

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    ヌヴィリオ、タル鍾SS置き場

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    白流 龍

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    ヌヴィレット誕生日/ヌヴィリオ/🌧️⛓️
    特別な日を、あなたへ

    ※おめでとうーーー!!
    ※付き合ってる
    ※リ誕続き

    ##ヌヴィリオ

    「んじゃ行ってくる」
    「こっちは大丈夫なのよ。安心して行ってらっしゃい」
    「はは、頼もしいな」
    年に一度、俺が自ら上に出る日。贈り物は自分で選びたい。この日付が近付くと、一日休みをもらって上に出る。
    今までは、それを箱に入れて、送っていたが、今年は…

    「…バレるな」
    腰に手を当ててそのどデカい扉を見上げる。
    パレ・メルモニア前、明日のヌヴィレットさんの予定を聞こうかとも思ったが、万が一バレては意味がない。
    俺の時に驚かせられたから、一泡吹かせてやりたいんだが。
    「…まぁ朝イチで乗り込めばいいか」
    そう独り言を漏らして、予約しておいた品物を取りに店へと向かう。



    夜、十一時。
    普段ならば既にプレゼントは手元にないが、今年はまだ、部屋にある。
    その事実にソワソワとする。
    いいのか?忙しいのに急に行っていいんだろうか。先週してしまった定期報告を、今更明日にしておけばよかったと思う。
    一度ベッドに入ったが寝れる様子もなかったのでぶらぶらと歩く。
    夜は、静かだ。
    月光が差し込む様が好きで、自然と足を運んでいた。外は晴れているようだ。良かった。
    ふと、
    遠くでのんびりラッコが泳いでいるのが見えた。
    可愛いな。ラッコなら飼ってみるのもありかもな、なんてぼんやり考えていた。
    「…は?」
    バンっとガラス窓に両手を付けて凝視する。
    違う。のんびりラッコなんかじゃない。それは。
    月光の中、透き通るような銀髪を漂わせて。俺を見つけて優雅に近寄ってくる。
    綺麗だとか、そんなことよりも、
    「何してんだあんた」
    聞こえるわけもないのに、ガラスの反対にいるその人に呼びかける。
    すると口に人差し指を当てられた。誰もいねぇよこんな時間。
    一先ず地下の入り口を指し示し頷いたのを確認してから早足で向かう執務室。

    「あんた俺があそこにいなかったらどうするつもりだったんだ夜中はどこも施錠してんだぞ」
    びしょ濡れで上がってきたヌヴィレットさんにタオルを投げつけて。しっかり考えれば全く支障はないはずなのだが。
    「その時は、帰ろうと思っていた。…眠る前に、君のいる場所を、できれば君を、一目見たいと思った。迷惑だっただろうか」
    タオルを首にかけて、既に服まで乾いているそのさまを見てやっと思い出したくらいには慌てたのだ。
    自分に対してため息を付く。調子が狂う。
    「迷惑じゃねぇけどよ。普段しねぇようなことされると、反応に困る」
    「ふむ、ではこれからは度々くることにしようか」
    「そういうことじゃねぇよ…」
    冗談なのかなんなのかわからないセリフ。最近増えた。気を許してくれている証のような気がして、少し口元が緩む。
    そうこうして、螺旋階段を登っている途中
    「あっ、ちょ、ちょっと待ってろ」
    小首をかしげたその人を置いて駆け上がり、後ほど渡す予定になったものを隠す。なにせまだ当日ではない。
    「あー、いいぞ」
    「失礼する」
    「ソファにでも座っててくれ。今飲み物準備する」
    背中を向ける。泳ぎにくいからなのか軽装になっているその姿を直視出来なかったから。
    でも、
    「ん、…え、ヌヴィレットさん…?」
    それは許されなかった。
    「君が、シャツ姿でいるのは新鮮だ。眠る所だっだろうか」
    すり、と。
    背中全体にひやりとした感覚。それが腰回りにも。必然的に耳元で声がする。ぎゅっと目をつぶり耐える。
    「…いや、中々眠れなくてな。でも…まぁ解決した」
    「ほう」
    「ヌヴィレットさん…動きにくい…んだが」
    「それはすまない」
    言葉とは逆に腰に回された腕に力が込められる。
    「ほんと…なんつーか…大胆になったよな、あんた…」
    少し前まで、触れることすら躊躇していたのに。
    「少しは耐えられるようになったのでな。」
    少し。理性が。
    それがわかり顔に熱が集まる。
    「っはぁー…」
    顔を隠した所で相手には見えないのだが、なんとなく。
    こんなに絆されちまって、それが嬉しくてたまらないなんて、昔の自分じゃ想像なんて出来なくて。
    「あ」
    時を知らせる音。日付が変わる音。
    腰にまとわりつく腕をなんとか剥がしてくるりと回る。
    目の前には一つ更に歳が離れた想い人。
    「リオセスリ殿」
    「お…ん?」
    おめでとうと、言いかけた所で遮られた。
    「名前も、呼んでくれるだろうか。」
    「あ、…お、おう」
    思ったよりも近くてただでさえ恥ずかしいのに追い討ちをかけられる。でも、今日はヌヴィレットさんが貴賓。俺はもてなす側。
    「えと…ヌヴィレットさん、誕生日、おめでとう」
    「ありがとう、リオセスリ殿。…一番に、君の声で聞きたかったのだ」
    あぁ、
    きっと今は
    「月が綺麗な夜なんだろうな」
    「…そうかもしれない」
    そんな顔をされて、こっちまで幸せを感じちまう。そして、その理由で泳いでここに来たという事実を伝えられたことに気付いて顔を隠す。
    容易く避けられる腕。曝される赤い顔。逃れられない体。
    そろり俯いたまま見上げれば、それは綺麗な切れ長の瞳孔。
    「まっ待った待った」
    堪らず慌ててその口元を手で抑える
    しかし従いたくないのか腰に回された腕の力が強くなる。
    「違うってヌヴィレットさんプレゼント先に渡すから」
    全力で押し返しているはずなのに頭突きをする勢いでぐいと押され早口になる。一先ず開放された。
    「ふむ」
    少し不満げだが期待の籠もった目。…それに応えられるかはわからないが。
    背中を向けて、先程慌てて隠した机の引き出しから包み紙を取り出す。
    「ん」
    「ふふ…もう少し何かないのか?」
    「や…おめでとうはさっき言ったし…なんて言えばいいかわかんなくてよ…」
    祝福の言葉には、やはりまだ慣れてはいなくて。自分が何かを渡すことで喜んでもらおうなんておこがましくて。毎年受け取った直後の顔なんて見たことがなかったから。
    …今更になって怖くなった。
    「では早速…」
    「あっまっ…そのまま持って帰ったらどうだい?」
    「却下だ」
    そしてまた軽く笑って、しゅるとリボンを外していく。
    それはなんというか。初めて身体を重ねたときよりも恐怖が勝っている。
    ヌヴィレットさんの事を考えて、ヌヴィレットさんのために準備したもの。人の顔を伺うのに長けていることにこんなにも恐怖を覚える日がくるなんて。
    「ほう、これは…」
    特注羽根ペンと、スネージナヤの雪解け水。
    「なんか…前に…書き心地が悪くなってきたとか言ってたから…。あと不純物が一番無いって聞いたから…うまいのかなって、思っ…」
    怖くて、顔を反らしていた。反応がないから、恐る恐る隣を見た。
    …あぁ、馬鹿だなぁ。
    こんなものに、そんな顔して。勿体ない。
    「嬉しい。リオセスリ殿。ありがとう」
    俺には、勿体なさすぎる。
    「…良かったよ。おめでとうぉおっ」
    言い終わる前に視界が反転した。
    「こんなにも幸せで良いのだろうか?」
    「はっ…それはこっちの台詞なんだがな」
    「…さっきの続きをしても?」
    「もちろん。今日はあんたが貴賓だからな。」
    あんたが好きだ。
    俺からも、ありがとうを。

    幸せな気持ちを。教えてくれて、ありがとう。
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