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    白流 龍

    @houhoupoteto

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    ヌヴィリオ、タル鍾SS置き場

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    白流 龍

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    先生誕生日/タル鍾/💧🔶
    捧げる物

    ※おめでとう!!大好き!!
    ※ストネタバレあり

    ##タル鍾

    雪が降る。積もっている。
    去年の年越しは積もってなかったのにな。残念。
    そんな事をぼんやりと、ベッドの上で窓を眺めながら考えた。
    コンコン
    「にーちゃん」
    暗い部屋に差し込む光の線。
    「ん、どうしたテウセル?もう寝る時間だろ?」
    「そうなんだけど、にーちゃんにお客さんだよ」
    「えっこんな時間にかい?誰だろう…ドアは開けてない?」
    布団を避けて足を下ろすが心当たりがなさすぎて警戒心が働く。
    「うん。ドアの窓から覗いたんだ。なんかキレイなお姉さんだったよ。寒そうなかっこして変なの」
    「そうか、偉いな」
    そう頭を撫でながら。
    召使…なら多分「怖い人」だろうし。
    師匠…なら多分来ない。
    そもそも知る人物かどうかも怪しい。ファデュイの執行官が怪我で療養中。なんてまさか漏れたのだとしたら。
    家族に知られずに対処しなければならない。一先ず俺だけで対応するべきだろう。
    「悪い人だったら困るなぁ…どんな人だったかな?」
    「んーとね、目がとってもキレイなオレンジ色だったよ」
    聞き終える頃には部屋を飛び出し階段を駆け下りていた。

    まさか、まさか

    期待?嬉しさ?よくわからないけど心臓は煩い。
    あんなに慎重に考えていたのが嘘のように、ドアスコープを除くこともなく鍵を開けドアを乱暴に開け放った。
    「公子…」
    「ぅわーーーーっ」
    眼の前の人物が予想通りすぎて、予想外過ぎて隣のコート掛けからひたすらに投げつけていてもう顔が見えなくなっている。
    そしてその冷たい手を引っ張りそのままずんずんと室内へ連れ込んだ。
    「あんたバカじゃないか極寒の地だってわかってたろもー暖炉、暖炉のとこ行くよ」
    「しかし、俺は別に大丈夫だが…」
    「みんな心配してるの。オレだけじゃないんだから。」
    「…そうか」
    キッチンからちらちらと気配を感じるのだろう。視線を送っている。
    …知らない人や俺が急に対応した時に、何かあったらすぐ逃げられるように、バックドアのあるキッチンに逃げ込むように伝えているから。
    そんな必要、なかったんだけど。
    「ほら座ってもータオル取ってくるから」
    パチパチと、最後に焚べた薪が弾ける音。
    素直にストンとその場に座りそれを見つめる横顔。
    あぁ、本当に。
    その姿を見つめてしまい立ち止まっている自分に気付いて、軽く首を振って取りに行った。
    「大丈夫だよ。にーちゃんの知り合いの人だったから。ほらみんな寝る寝る」
    「えーちゃんとみたいー」
    「かのじょー?」
    「ほら見世物じゃないんだよ全く」
    バスルームの隣のキッチンにいる弟たちに声を掛ける。危険じゃないとわかった途端にこれだ。
    「はい、頭拭きなよ。良くわかったねこんな所。てかここにいること」
    隣に座りながら質問する。
    出身がスネージナヤであることは伝えていたが、実家の場所までは伝えていない。ましてこの周辺では『公子』でもなければ『タルタリヤ』でもないのだ。
    そしてフォンテーヌに行くことは伝えていたが実家に帰ることなど伝える暇もなかったのに。
    「…風の噂で聞いた。スネージナヤについてからは、『貴殿』の匂いを頼りに。」
    「犬かよ…やめてよほんと…凡人じゃないのかよ…」
    「…すまない。今回は余裕がなかった」
    あぁ、この人ここまでまさか飛んできたのか。
    そこまでして…
    「…や、オレのせいでもあるよね、ごめん。…っあー…恥ずかし」
    思い出してしまった。まるで今生の別れのような台詞を吐いて去ったこと。
    なのにこんな、まぁ腕は折れてるしまだ体の傷も治ってなんかいないけど、普通に話せる状態で再会するとか。恥ずかしい。
    「…ありがと」
    「…安心した」
    恥ずかしい、けど。愛おしい。…でも、
    「…オレの部屋行こうか」
    「ん、あぁ」
    リビングのドアの隙間に並ぶ小さな目たちから逃れたい。
    「痛っ…はぁ、カッコつかないね」
    「格好をつけたいのか?」
    「当たり前でしょ…」
    安堵からか痛覚が戻り、立ち上がるのに隙を見せたが最後、手を差し伸べられてしまった。
    「上だから、こっち」
    一旦玄関まで戻り、階段を登り始めてからふと。
    …部屋、なんか変なもん置いてなかったよな?と。
    初めて、恋人を部屋にいれる事に気付く。
    「…公子殿?」
    子供の気配が消えたからであろういつもの呼び方。久しぶりすぎて背中がゾクリと震える。
    それほどまでには飢えていた。
    「ん、いや…したくなっちゃうなーってさ」
    「…そう、か」
    何が、とは言わないが先生にも伝わったようだ。
    流石にここじゃ出来ないことはわかってる。
    「…キスなら構わないだろう?」
    「あんたさぁ…ほんと、やめてくれよ…」
    ふふ、と。背中に聞こえる笑い声。このちょっとイタズラな声。好きなんだよなぁ。なんて。
    「はい、どーぞ。先生の部屋と違って汚いけど許してよね」
    「構わない。失礼する」
    パチ、と部屋の電気をつける。
    「ふふ…慌てて出てくれたのか」
    「あっもーそういうとこ気付かなくていいから」
    乱れたベッドを見て察せられてしまった。
    そのベッドに腰を掛けそのまま後ろに倒れる先生
    「懐かしい匂いだ。」
    「ねぇ、誘ってんの?」
    ギシ、と膝を乗せて覆いかぶさるように。
    「本来ならな」
    「キスならいいんでしょ?」
    「ふふ、そうだな」
    久しぶりのそれは、痺れるように甘くて。
    「ん…っ」
    「…はーもー耐えろオレー」
    「はははっ」
    「笑い事じゃないでしょ」
    先生の胸に顔を埋めて吠える。生殺しだ。
    そんな俺の頭を撫でてくる。…弟たちに見られたらなんて言われるか。
    「ビジンなおねーさん、だって」
    「…誰がだ?」
    「先生」
    「光栄だな」
    「テキトー」
    そのまま二人でベッドに仰向けになって笑った。
    「先生」
    「何だ?」
    「好き」
    「俺もだ」
    「即答だなー。嬉しいよ。よっ…と」
    起き上がり、サイドテーブルの引き出しを開ける。
    …よかった。
    「せんせ、誕生日、おめでとう」
    横になったまま、目を丸くする先生のおでこにコツンとプレゼントを当てる
    「そんなことだろうと思ったよ。先生の誕生日。あと十分ある。」
    「そうか、すっかり忘れていたな」
    「俺は先生にも会えないし一緒にご飯も食えないし、プレゼントもいつ渡せるかもわかんないしですげー残念に思ってたのに。」
    「そうか…感謝する」
    「プレゼント開けてから言ってよ」
    「その気持ちにだ」
    起き上がり、開けられるプレゼント。
    すでに顔に出てしまっている先生の表情と同じ顔になってしまう。
    …嬉しい。一緒に過ごせることが、こんなにも。
    「ピアスか」
    「そ、オレとお揃い。…嬉しい?」
    「あぁ」
    言うか言わないかで早速自分の飾りを外しにかかっている姿を見て笑ってしまう
    「あっはは良かったよ気に入ってもらえて」
    「当たり前だ。随分前から用意してくれていたようだからな」
    「う…バレた…」
    それはそうだ。フォンテーヌに行く前に、もしかしたら最後になると思って選んだプレゼント。
    オレ自身のだと重すぎると思って同じものにした。
    …それを今、隣でつけてくれている。
    「似合うか?」
    「もちろん。オレが選んだんだもん」
    「ふふ、そうだな」
    あぁ、幸せだ。
    こんなにも、生きていられることが嬉しいと感じる日が来るなんて。
    「先生、…今年もよろしくね」
    「あぁ、こちらこそ」
    今年もいい年になりそうだ。
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