五七版夏の企画その2「二度目」 自宅だ。まごうことなき自分の家だ。
一LDKで、とりわけキッチンの使い勝手の良さを気に入っている。自分自身のためだけにしつらえた、特別な空間だ。
その空間のなか、七海はリビングにあるソファに腰を落ちつけていた。今日は久しぶりの休暇だった。コーヒーを片手に、七海はハードカバーのページをゆったりとめくる。
この本は、買ってから積んであったもののうちの一冊だ。見開きを読み終えるごとに、指先を繰る。本の城壁を少しずつ、着実に突き崩していく。その時間のありがたみを、ただ静かに噛みしめる。
休日はいつもこうだ。好きなだけ本を読む。料理をする。そうやって自分の、自分だけの時間を満喫する。
「あ、あのさ」
だが、今日は違う。否、これからは違う。
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