べろべろに呑んだとき見る夢の中でしか月くんに会えない鯉くん このあいだの月島はよかった、と、鯉登は店員を呼びとめて追加の冷酒を注文しながら、ひとつ前に見た夢のことを考えていた。酒をあびるほどのんだ夜にだけ見ることができる夢。場所は七人乗りのファミリーカーで——なにしろ夢なのでロケーションには脈絡がない。ときによってそれは知らない家のリビングルームだったり、よくわからない倉庫だったり、さびれた砂浜だったこともあるし、病院の待合室風だったこともある——、そこで月島は少し乱暴に鯉登を抱いた。ほとんど言葉もなく、けれど何度も髪を梳いた指先が、行為の激しさと裏腹にとてもやさしかった。
鯉登さんはきれいにお酒をのみますね、と、先月(先々月だったかもしれない)の飲み会で誰かが言ったのを思い出す。
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