点Yの軌跡はある定点を通る「友一先輩、ただいま。」
京は帰宅後すぐに声をかけたが、部屋はシンと静まりかえっている。いつもならすぐに顔を見せるのに。
寝てるのだろうかと思い、リビングの友一のお気に入りのソファーの上を見るが、その姿は見えない。
「……先輩?」
昼間は陽当たりがよく、ぽかぽかになるソファー。
今は冷たい夜の闇が落ちているだけだった。
「せんぱーい?」
寝室をのぞいてもいない。
二人暮らしがギリギリの小さなマンションは、他に探せるところなんてない。
こんな夜遅くになっても家にいないなんて。
まさか家出とか。
僕、何か嫌われるようなことしたっけ。
それとも、事件とか事故とか。
心配すればするほど、思い付く事すべてに巻き込まれていそうな悪い予感に胸騒ぎがして、京は荷物だけ置いて外にとってかえした。
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