「なぁ、ジャン……」
「おい、御神苗……」
呼びかけが重なった。視線を見合わせ、「なんだよ」「そっちこそ」と、普段の彼ららしくなく話し淀む。
二人がいるのは、南米に設置された研究所の内部だ。地中から見つかったオーパーツの発掘のために数ヶ月前に仮設され、発掘や警備の人員が多数寝起きしている。他機関からの斥候が増えたたため防衛隊の増員と同時にスプリガン二人も派遣されたが、今のところは小競り合い程度だ。
「高校生は仮眠の時間じゃねーのかよ?」
「まだ二十二時だぜ、中学生だって寝てねえよ」
「おい、オレにもカップ取ってくれ」
「ほらよ」
油断をしているわけではないが、深夜の食堂でコーヒーを飲むくらいの時間はあったし、顔見知りがいれば雑談するくらいの余裕はあった。コーヒーの良い香りが彼らのいる一角を満たす。ジャンは、カップを傾けながら口を開く。
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